第3夜 徒然草 まとめ

徒然草は、800年前のおっさんの人間観察がエグい随筆

世を捨てた坊主が、ひとりで硯の前に座って、何を書いたかと思ったら、人間のダサい瞬間を243個もメモってた。怖い怖い怖い。徳を積めよ。なんで他人のミス集めてんだよwww でもこれが刺さる。徒然草、ありがたい古典の顔して、中身は700年前の人間ドキュメントなんよ。

徒然草って何がヤバい?人間のダサさを見逃さない

コウキ
コウキ
徒然草、入口から変なんよ。兼好法師って男がいる。吉田兼好とも呼ばれる同じ人ね。この人、宮仕え、要は朝廷まわりで働いたあと、出家する。俗世から離れて仏の道に入るってこと。
はい、普通は静かに念仏でしょ。もう人の欲とか見栄とか、そういう騒がしい場所から降りたんだなって思うじゃん。違う。世を捨てたのに、世を見すぎ。
ひなの
ひなの
出家したのに観察やめないの怖い(笑)
コウキ
コウキ
しかもタイトルの出だしが有名でさ。つれづれなるままに、日ぐらし硯にむかひて、って始まる。要は、特にやることもなく一日中、硯の前に座って、心に浮かんだしょうもないことを書きつけた、みたいな感じ。で、それがただの暇つぶしで終わらない。
死ぬ話、花の見方、友達の選び方、家の趣味、坊主の失敗、酒の事故、欲の話。ひとりで机に向かって、人間のダメなとこだけコツコツ集めてくる。やめろ。俺の分まで集めるなwww
ヒロシ
ヒロシ
世を捨てたのに世間のメモ帳だけは離さへんのやな。
コウキ
コウキ
そう。徒然草は随筆って呼ばれる。随筆って聞くと急に教科書っぽいけど、要は見たこと、考えたこと、なんか引っかかったことを短く書き留めたやつ。全部で243章。
243個の話がある。ちょっとした気づきの量じゃない。人間観察の筋トレを毎日やってる人の量。
しかもこの本、学校では枕草子、方丈記と並んで日本三大随筆って扱われる。枕草子は、これいいよね、これダサいよね、って宮中のセンスを切っていく本。方丈記は、世の中ぐちゃぐちゃで住まいも人生もあてにならん、って小さい家から見てる本。
で、徒然草はその横で、無常とか言いながら、坊主が酒の席で器かぶって抜けない話を置いてくる。温度差がバグってる。ありがたい話の隣に宴会事故を置くなwww
しずく
しずく
急に事故映像になるのやめて(笑)
コウキ
コウキ
兼好の怖さは、人間をきれいに包まないところなんよ。人は見栄を張る。人は目的地まで行って本命を見ない。人は危ない時より、もう平気って思った瞬間にやらかす。
人は無欲の顔で柑子、要はみかんの仲間みたいな実だけはガチで守る。悟った顔の奥から、ちょっと待てそれ俺の実、が出てくる。無欲の顔してそこだけ死守。これ、俺らも笑えない。
全員が自分の過去を一個ずつ思い出す。
コウキ
コウキ
だから徒然草は、ありがたい古典の顔した人間ドキュメントなんよ。出家したのに人間観察だけはやめられない男が、硯の前でずっと見てる。で、そのカメラがいちばん向けてる本題が無常。全部変わる。
だから美しい。なのに人間は同じ場所で転ぶ。次はそこ。無常って言葉、授業だと眠いけど、兼好にかかると普通に心臓の横を刺してくる。

無常って何?全部変わるから欲まで見える

コウキ
コウキ
無常って聞くと、はいはい古典の黒板タイムね、ってなるじゃん。人も物も季節も、ずっと同じままではいられない。仏教から来た見方で、命も若さも評判も花も月も、いつか変わるし消える。
ここだけなら眠い。ノートに赤線引いて終了。
でも兼好の無常は、眠らせてくれない。たとえば、花が散らない、月がずっと満月、人が死なない、若さも一生そのまま、そんな世界だったら最高じゃんって一瞬思う。けど三日で飽きる。
ずっと満月って、毎日ずっと祭りみたいなもんで、ありがたみが死ぬ。限定だから人は狂う。残り三個って言われた瞬間、別に欲しくなかった菓子まで急に守り始める。
ひなの
ひなの
限定で脳バカになるの分かる。急に私の分を守りたくなる(笑)
コウキ
コウキ
そう。それを人生に広げてる。終わるから今が光る。散るから花を見に行く。
欠けるから月を待つ。会えなくなるかもしれないから、その一回の飲み会が妙に残る。ずっとあるものは雑にされる。なくなるものだけ、人間は急に両手で持つ。
で、ここからが兼好のいやらしいとこ。普通なら、だから今を大切にしようね、で終われる。きれいな話じゃん。ところが兼好はそこで止まらない。全部変わるのに、人は見栄を張る。
全部消えるのに、物を抱える。どうせ死ぬのに、肩書きでマウントを取る。無常を知ってるはずの坊主まで、酒が入ると器を頭にかぶる。おい、さっきまで人生ははかないとか言ってた口で何してんだよ、ってなる。
ヒロシ
ヒロシ
悟りと宴会芸の距離が近すぎるわ。
コウキ
コウキ
だから徒然草の無常は、癒やしの言葉じゃない。全部変わるって分かってるのに、なんでそんなに抱え込むの、なんでそんなにドヤるの、なんでそんなに油断するの、って横から見てくる視線なんよ。世を捨てたのに世を見すぎ。
兼好、悟りの席に座ってるのに、隣の席の注文ミスも聞いてる。あ、あいつ味噌汁二つ頼んだな、みたいな顔してる。
しずくが笑いながらグラスを置く。
しずく
しずく
その顔されたら帰りたい。
コウキ
コウキ
しかも自分だけ完全に悟った人として上から殴ってくる感じでもない。人の家の趣味が気になる。果物の囲いを見て冷める。坊主の失敗をかなり面白そうに見てる。
これがいい。兼好自身も、人間くさい。だから説教じゃなくて、うわ分かる、でも痛い、になる。
結局俺らも同じなんよ。無常だね、とか言いながら、帰りに傘が一本多くあったら、まあ今日雨だし、って一瞬思う。言い訳が早い。欲が足速い。だから徒然草が残ったのは、昔の人が偉いからだけじゃない。
700年たっても俺らが同じ場所で転ぶから残った。で、その転び方の代表が次。仁和寺の法師。人生かけて参拝したのに、本命を見ずに帰る。普通に旅行の失敗として完成度が高すぎる。

仁和寺の法師が強すぎる。本命を見ずに達成顔で帰る人

コウキ
コウキ
仁和寺の法師、徒然草のスターなんよ。京都の仁和寺にいた年配の坊主が、石清水八幡宮に行ったことがない。石清水八幡宮は有名な神社で、本宮、要は一番大事な参拝先が男山の上にある。で、この坊主は長年、行きたい行きたいと思ってた。
ある日ついに、行くぞって一人で歩いて行く。ここまでは泣ける。遅咲きの旅。こっちは応援してる。
ところが現地に着いて、ふもとの寺や神社を拝む。そこまではいい。問題はそのあと。こいつ、ああ、これが石清水か、尊いわ、って満足して帰っちゃう。
違う違う違う。メインは山の上。みんなが男山に登ってたのは、足腰を鍛えたいからじゃない。そこに本命があるから登ってる。
ひなの
ひなの
達成顔で帰ったの!?えぐwww
ヒロシ
ヒロシ
ライブ会場の外でタオル買って、ええライブやったなって帰るやつやん。音一個も聞いてへん。
コウキ
コウキ
それ。物販で泣いて帰る人。しかも帰ってから人に話すのよ。長年の願いがかなった、ありがたかった。ただ、みんな山へ登ってたのは何だったんだろうなあ、って。そこだよ。
お前が捨ててきた疑問が本体だよ。疑問を持ち帰るな。山に置いてくるな。聞け。スマホない時代でも口はあるだろ。
ここで兼好が出す結論が強い。少しのことにも、先達はあらまほしき、って言う。昔の言い方だけど、要は、ちょっとしたことでも案内してくれる人、経験者がいたほうがいい、ってこと。知らない場所で自己判断すると、人は入口を本殿だと思う。
受付だけ行って手続き終わった顔になる。新しいアプリで一番上のボタンだけ押して、もう全部分かった気になる。本人の中ではもう終わってる。でも現実はまだ始まってすらない。
ヒロシが箸で山を登るしぐさをする。
コウキ
コウキ
しかも仁和寺はこれだけじゃない。もう一人いる。宴会でやらかす坊主。若い僧が正式な僧になる区切りの宴で、みんなで飲んで遊んでる。
そこで一人の法師が、近くにあった足鼎を見つける。足鼎って、三本足の金属の器みたいなものね。もちろん頭にかぶる道具じゃない。で、こいつ次に何したと思う?
ひなの
ひなの
叩いて鳴らした?
ヒロシ
ヒロシ
酒入れて回し飲みやろ。
しずく
しずく
いやな予感しかしない。
コウキがゆっくり首を振る。
コウキ
コウキ
頭にかぶった。鼻を押しつぶして顔を突っ込んで、バッと踊り出した。
ヒロシ
ヒロシ
アホやんけwwww
ひなの
ひなの
僧になる宴で何してんのwwww
しずく
しずく
そこに頭は入れないでしょwww
コウキ
コウキ
踊ってる時は盛り上がるよ。そりゃそう。坊主が金属の器を顔にめり込ませて踊ってるんだから。問題は踊り終わったあと。取ろうとする。抜けない。
全然抜けない。場の空気が、もっとやれ、から、これ救急じゃない?に変わる。引っ張ると首のあたりが傷つく。割ろうとしても割れない。医者のところに連れて行く。でも医者も、こんなの知らん、ってなる。
最終的に強引に外す流れになるけど、耳や鼻を傷つける。宴会の一発芸が顔面の事件になる。現代でもあるよね。
酔ってカラーコーンかぶるやつ、店の変な看板に顔を入れるやつ、友達の笑いを一秒ほしくて人生を五分壊すやつ。セックス関係ないのに、判断力が先に裸になってる。
全員、昔の飲み会の誰かを思い出して黙る。
コウキ
コウキ
仁和寺、二枚看板が強すぎる。本命を見ずに帰る坊主と、器を頭にかぶって抜けない坊主。知識不足と酒の調子乗り。人間の負け方が二種類そろってる。
兼好は大声で裁かない。ただ置く。だから怖い。笑ってたら、自分の過去の足鼎が脳内でカランって鳴る。

木登り名人が刺さる。事故は安心した顔の横から来る

コウキ
コウキ
木登り名人の話、これは職場に貼ったほうがいい。木登りの名人がいて、誰かを高い木に登らせて、上の枝を切らせてる。木の先っぽは普通に危ない。
枝は細いし、高いし、落ちたら終わり。俺らなら下から叫ぶ。気をつけろ、そこ危ない、足元見ろ、命を大事にしろって。
でも名人は、危ないところでは黙ってる。じっと見てる。で、作業が終わって、登ってた人がだいぶ下まで降りてくる。軒の高さくらい。軒って家の屋根の端あたりね。
まあ最悪、飛び降りても何とかなりそうな高さ。その瞬間、名人が言う。ミスるなよ。気をつけて降りろよ。
ひなの
ひなの
今!?上で言ってよ(笑)
ヒロシ
ヒロシ
家の前で急に、安全運転やでって言うカーナビやな。遅いねん。
コウキ
コウキ
みんなそう思う。だから聞く。そんな高さなら飛び降りても降りられるのに、なんで今さら注意するんだって。
そしたら名人が答える。目がくらむくらい危ない枝にいる時は、本人が怖がってるから言わなくても気をつける。失敗は、楽なところになってからやる。
一拍、全員の顔が仕事モードになる。
コウキ
コウキ
これ、強すぎる。怖い場所では人は真剣になる。でも、もう大丈夫って思った瞬間、心が先に帰宅する。体はまだ木にいるのに、心だけ風呂入ってる。そこで足を滑らせる。資料もそう。最後の保存で変な名前にする。
会計もそう。最後の桁でミスる。料理もそう。火を止めたと思ってから焦がす。家の近所で油断する。大事故じゃなくても、最後の小さい慢心で全部台無しになる。
兼好はこの名人の言葉をかなり高く見てる。身分が高い人の言葉じゃなくても、聖人の戒めにかなう、みたいに受け取る。聖人って、めちゃくちゃ立派な人のことね。
つまり兼好は、肩書きより中身を見てる。偉い坊主のありがたい話だけじゃなくて、木の下で働く名人の一言に、人生の芯を見つける。
しずく
しずく
現場の一言って刺さる時あるよね。
コウキ
コウキ
ある。床の間からじゃなくて、木の下から飛んでくる知恵。下からおじさんが、そこ油断すんなよ、って刺してくる。しかもこの話、仁和寺ともつながる。仁和寺の法師は、もう参拝した気になってる。
木の上の人は、もう降りた気になってる。本人の中ではもう終わってる。現実は終わってない。気持ちだけ先に完了ボタンを押す。そこで事故る。
ヒロシ
ヒロシ
完了の顔が一番危ないんか。いや耳が痛いわ。
コウキが空中の完了ボタンを押す。
コウキ
コウキ
そう。完了の顔が一番危ない。参拝した気、降りた気、送った気、確認した気。だいたい事故は、その顔の横から来る。人間、終わったと思った瞬間が、まだ終わってない。
これが木登り名人の刺し方。で、次は美意識。兼好は、満開の桜でテンション上がってる人にも、横からちょっと冷たい目を向ける。面倒くさいけど、言ってることは強い。

兼好の粋が面倒くさい。満開だけ追う人と柑子を囲う人

コウキ
コウキ
兼好の美意識で有名なのが、花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは、ってやつ。古い言い方だけど、要は、桜は満開だけ見るものなのか、月は欠けも雲もない時だけ見るものなのか、いや違うだろ、って話。今で言うと、映える瞬間だけ回収して満足するな、になる。
満開、快晴、真正面、はい投稿。兼好からしたら、それだけで終わるの浅くない?って顔。
ひなの
ひなの
写真撮った直後に隣でそれ言われたらきつい(笑)
コウキ
コウキ
きついよ。花見で、満開きれい、って言った瞬間に、兼好が横で、散った庭にも味あるけどな、って言う。酒が少しぬるくなる。でも言ってることは分かる。雨で見えない月を思う。
家にいて春が過ぎたのを想像する。咲きそうな木の先っぽを見る。散ったあとの庭を見る。全部見えてるものだけじゃなくて、見えなかったもの、間に合わなかったもの、欠けたものに、心が勝手に入り込む。そこに味が出る。
ヒロシ
ヒロシ
めんどいけど当たってるやつやな。反論しにくい。
コウキ
コウキ
で、この粋が、柑子の話で急に生臭くなる。柑子って、小ぶりな柑橘。今の感覚なら、みかんの仲間と思えばいい。季節は神無月。昔の呼び方で、今の十月ごろ。兼好が山里の庵に入っていく。庵は小さな住まいね。苔の細道、静かな家、水を引く細い樋からぽたぽた水が落ちる。
こういう樋を昔の言葉で懸樋って呼ぶ。さらに仏に供える水や花を置く棚があって、昔の言葉では閼伽棚。そこに菊や紅葉がちゃんとある。もう絵として完璧。静けさ。品。世を離れた暮らし。
そこに大きな柑子の木がある。実がたわわ。これも美しい。ところが木の周りがガチガチに囲ってある。
盗られないように守ってる。まあ生活としては分かる。実がなってたら守るよね。じゃあ、兼好は次に何を思ったと思う?
ひなの
ひなの
実りまできれいだな、じゃないの?
ヒロシ
ヒロシ
一個くらい食わせてくれ、やろ。
しずく
しずく
なんか嫌な落ち方しそう。
コウキがグラスを置く。
コウキ
コウキ
冷めた。この木がなければよかったのに、ってなる。
ひなの
ひなの
みかん守っただけでwwww
ヒロシ
ヒロシ
厳しすぎるやろ。盗られたら困るやん。
コウキ
コウキ
そう。守りたい気持ちは分かる。柑子は悪くない。囲いも暮らしとしては分かる。
でも兼好が見てるのはそこじゃない。世を離れたような山里で、苔、水音、菊、紅葉って静けさを積み上げた奥から、これは私の実だ、触るなよ、って所有欲が顔を出す。その瞬間、隠者ムードがパキッと割れる。あ、人間いたわ、ってなる。
しずく
しずく
言い方の温度がいちばん怖い。
コウキ
コウキ
説教じゃないんよ。温度計。少し冷めた、で切る。しかも精度が高すぎる。
俺らも同じ。物に執着しないって顔で限定品を守る。席なんてどこでもいいって言いながら、端の落ち着く席だけは譲らない。無欲の顔でスマホの充電器だけは死守する。
テーブルの端の充電器に全員の目が行く。
コウキ
コウキ
だから徒然草をまとめると、無常の本であり、人間があんまり変われない本でもある。全部移ろう。だから今が美しい。
でもその今を生きる人間は、入口を本殿だと思い、足鼎を頭にかぶり、軒の高さで油断し、満開だけをありがたがり、柑子の木を囲う。700年たっても、だいたい同じ。
決めるよ。徒然草は、世を捨てたはずの兼好法師が、人間観察だけは捨てられなかった本。ありがたい古典のふりをした、俺らの失敗アルバム。飲み会で話すなら、まず仁和寺、次に木登り、最後に柑子。
この順で行けば、本人の中ではもう終わってる事故と、無欲の顔してそこだけ死守が一気につながる。で、最後に充電器を見る。だいたい誰かが目をそらす。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. 徒然草つれづれぐさ

    兼好法師の随筆。暇と観察眼が名作になる代表例。

  2. 兼好法師けんこうほうし

    世を捨てたのに人間を見すぎている作者。

  3. 無常むじょう

    すべては変わるという感覚。徒然草の背骨。

  4. 随筆ずいひつ

    思いついたことを書き留める文章。徒然草のジャンル。

よくある質問

Q. 徒然草って何?
A. 兼好法師が、見たこと、考えたこと、引っかかったことを書き留めた随筆。全部で243章あり、無常、人間の失敗、見栄、欲、美意識、生き方の知恵が短い話で並ぶ。ありがたい古典の顔をした人間観察メモ。
Q. 兼好法師ってどんな人?
A. 吉田兼好とも呼ばれる同じ人物。朝廷まわりで働いたあと出家した人だけど、世を離れたのに人間の見栄、油断、欲、ダサい瞬間をめちゃくちゃ細かく見ている。世を捨てたのに世を見すぎな人。
Q. 徒然草でまず語りやすい話は?
A. 仁和寺の法師が石清水八幡宮の本宮を見ずに帰る話、宴会で足鼎をかぶって抜けなくなる話、木登り名人が油断を刺す話、満開だけを見るなという花と月の話、柑子の木を囲って冷められる話。このあたりが飲み会で強い。
Q. 徒然草の無常ってどういうこと?
A. 人も物も季節も同じままではいられない、という見方。兼好は、移ろうから今が美しくなるだけで終わらせない。その光で、人間の見栄や欲や油断まで丸見えになるところを見ている。
Q. 一言でまとめると?
A. 徒然草は、無常を背景に、人間のあるある、失敗、欲、美意識を短い話で切り取った本。笑って読んでると、入口を本殿だと思った自分、完了の顔で油断した自分、柑子を囲う自分まで照らされる。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★

だいたい健全、たまにやらかすおっさんの随筆

  • 軽犯罪法社会生活上の軽微な秩序違反行為を取り締まる法律。

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 中学国語(光村図書 中学2年)・高校入試・定期テスト古文

    出典: 徒然草 第五十二段「仁和寺にある法師」

    光村図書の中学2年国語に長く採録されてきた定番教材。問われ方は主に三つ。(1)法師はなぜ本宮を拝まずに帰ったのか、その思い違いを説明させる。(2)法師が最後に語った「山へ登っていった人々は何だったのだろう」という言葉から、何を見落としたのかを答えさせる。(3)結びの「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり」が説く教訓を現代語で答えさせる。あわせて歴史的仮名遣いや係り結びの確認も出る。

    答えの要点:正解するには、法師が『ふもとの極楽寺や高良などを拝んだだけで、石清水八幡宮の参拝はこれで済んだ』と思い込み、本宮が男山の山上にあると知らないまま満足して帰った、という早合点を押さえる。他の参拝者が山へ登るのを不思議に思いながらも、自分から人に尋ねなかったために中心(本宮)を見落とした点が読解の核心。そこから兼好は、どんな些細なことでも案内役や経験者(先達)がいてほしい、つまり一言尋ねれば肝心を取りこぼさずに済む、という教訓を付け足している。係り結びは『尊くこそおはしけれ』の『こそ…けれ』を押さえるとよい。

  • 大学入試 国語古文

    出典: 徒然草(章段全般)

    枕草子・方丈記と並ぶ日本三大随筆として、大学入試古文の頻出作品。説話風の章段を読ませ、登場人物がなぜその言動をとったのかという事情と、その出来事に兼好が付け加えた評価・主張(教訓・皮肉・美意識)を、記述や選択で読み取らせる出題が定番。反語表現や頻出古語の意味も合わせて問われる。

    答えの要点:正解の軸は、徒然草の章段が『具体的な出来事(説話)+それに対する兼好の感想・批評』という型でできていると理解すること。記述では、まず登場人物がなぜその言動をとったかを本文の事情から押さえ、最後に置かれた兼好の評価や教訓を自分の言葉でまとめると点になる。『花は盛りに月は隈なきをのみ見るものかは』のような反語(…ものかは=いや、そうではない)、『あらまほし(あってほしい)』『つきづきし(似つかわしい)』などの頻出古語、そして全体を貫く無常観という主題を踏まえると、選択肢の正誤判断も記述もぶれない。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1「高名の木登り」で名人は、危ない梢にいる間は何も言わず、軒の高さほどまで降りてきた時に「あやまちすな。心して降りよ」と声をかけた。なぜこの場面で注意したのか、その理由を現代の仕事や生活の例を一つ挙げながら八十字以内で説明しなさい。

問2仁和寺の法師は石清水八幡宮の本宮を見ずに帰り、後で「山へ登っていった人々は何かあったのだろうか」と語った。この一段から兼好が読者に伝えようとした戒めを、現代の身近な具体例を一つ挙げて百字以内で述べなさい。

問3「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」という一文に表れている兼好の美意識を、本文の趣旨に沿って具体的な情景を一つ挙げながら百字以内で説明しなさい。