第3夜 徒然草 その2

つれづれなるままに。暇すぎて書いたら名作になった話

徒然草って、古典の重鎮ヅラしてるくせに、玄関開けた瞬間の第一声がほぼ「やることねえ」なんよ。クソ暇から始まるのに、人間の恥まで掘るから油断できない。兼好法師、朝から晩まで硯の前でメモって、どうでもいい脳内の泡を書いて、最後は自分で「なんか変なテンションになってきた」って言う。なのにそこから、人間の見栄、老い、墓場の露、火葬の煙、満開じゃない花の美しさまで行く。入口は暇人のメモ。出口は命の賞味期限。笑ってたら急にグラス置くやつ。

初手が暇すぎる

コウキ
コウキ
聞いて。徒然草って、名前だけ聞くと古典界の偉い人が腕組みして立ってる感じあるじゃん。人生とは、とか言いそうな顔。
でも一枚めくったら序段、つまりいちばん最初の章で、兼好法師がいきなり「つれづれなるままに」って言うの。これ、ありがたい呪文じゃなくて、ざっくり言うと、やることねえなあ、なんよ。名作の入口、ただの暇www しかもかなり濃い暇。
ひなの
ひなの
え、あれ暇なの?かっこつけてたのに?
コウキ
コウキ
そう。しかも続きが「日暮らし、硯にむかひて」。朝から晩まで硯の前にいるってこと。今なら、通知も来てないのにメモアプリ開いて、ずっと何か打ってる人。仕事じゃない。
企画書じゃない。ただの暇つぶしのメモ。ここがゆるいから、徒然草ぜんぶの口調もゆるく入れる。最初から肩を組んでくる古典なんよ。
ヒロシ
ヒロシ
古典の入口が待機画面なの笑うわwww
コウキ
コウキ
で、書いてる中身が「心にうつりゆくよしなしごと」。よしなしごとって、筋の通った立派な話じゃなくて、取りとめない、どうでもいいこと。
あの人の見栄だっさ、花って散るからよくね、年取るの怖すぎ、靴下の穴しんど、みたいな心の中の泡。浮かんでは消えるやつを、そのまま書いてる。
しずく
しずく
靴下の穴まで古典に入れるなw
コウキ
コウキ
しかも最後に「あやしうこそものぐるほしけれ」。これ、自分でもなんか変なテンションになってきた、って自己申告してる感じ。兼好、暇、硯、変なテンション。
この三点セットで開幕してる。説法の顔して、自分の様子がおかしいことだけは正直。逆に信用できる。
で、こいつ次に何したと思う?暇で一日中メモって、自分で変なテンション宣言した男が、普通ならここで終わるじゃん。
ひなの
ひなの
寝る。お願いだから寝て。
ヒロシ
ヒロシ
酒飲むやろ。墨ついた手で。
しずく
しずく
片づけてほしい。まず部屋を。
コウキが硯をこする真似をして、全員が身を乗り出す。
コウキ
コウキ
七百年残る名作にした。暇の処理能力が化け物www

人間が漏れる本

コウキ
コウキ
で、徒然草のやばさは、どうでもいい瞬間を捨てないところ。普通、人に見せるなら立派な話だけ残すじゃん。実績、理念、がんばった話、ちょっと盛った武勇伝。
兼好は逆。人間って、立派な演説より、どうでもいい場面で本体が漏れるって分かってる。
飲み会でもそう。乾杯の挨拶より、店員さん呼ぶ声がやたらデカいやつ。割り勘で急に五十円の会計士になるやつ。
昔の恋を美談っぽく語ってるけど、よく聞いたら相手をキープしてただけのやつ。そこで見栄とか嫉妬とか寂しさとか、しまってたちんこみたいな本音が出る。いやしまえ、それはしまえwww
ヒロシ
ヒロシ
五十円会計士おる。急に目が銀行員になる。
ひなの
ひなの
キープ地獄、言い方ひどいのに分かるw
コウキ
コウキ
兼好はそこを怒鳴らない。お前はダメだって札を貼らない。スッと置く。人ってこうなるよね、ってテーブルの真ん中に置く。
で、こっちは最初あいつの話だと思って笑う。三秒後、自分の話だと気づいて箸が止まる。これが怖い。
しずく
しずく
箸止まるの嫌すぎるw
コウキ
コウキ
ちなみに徒然草は、鎌倉時代の終わりごろから南北朝のころに兼好法師が書いた随筆で、枕草子、方丈記と並んで日本三大随筆の一つって言われる。ここで覚え方は簡単。清少納言のキレ味、鴨長明の引っ越しと世のはかなさ、兼好の暇メモ。
この三人で日本三大随筆。急にテストにも飲み会にも強くなる。
ヒロシ
ヒロシ
暇メモで三大入り、のし上がり方えぐい。
コウキ
コウキ
随筆って、テーマがバラバラに散らばった文章なんよ。一直線に教訓を並べる本じゃない。だから余計に人間が出る。人の頭って整理棚じゃないじゃん。
朝は他人のダサさで笑って、昼は自分の老いにビビって、夜は月を見て急に静かになる。帰ったら靴下の穴で現実に戻る。兼好はそのぐちゃぐちゃを、きれいに整えすぎずに出す。
グラスの氷が鳴る。
コウキ
コウキ
だから徒然草は、人間が漏れる本。笑って読んでたら、自分の見栄まで机に出される。最悪なのに、うまい。

急に墓場が来る

コウキ
コウキ
で、ここから無常に行く。無常って、人も物もずっと同じままでは残らない、移ろって消えるって考え。仏教由来のやつ。でも徒然草だと、ただ暗い話じゃない。
今を濃く見せる力になってる。昨日まで熱かった相手が、今日いきなり忙しくてって言うのも小さい無常。腹立つけど、古典的には正しいw
ひなの
ひなの
無常の例が身近で最悪w
コウキ
コウキ
有名なのが「あだし野の露」と「鳥部山の煙」。あだし野は墓地を思わせる場所。鳥部山は火葬を思わせる場所。露は朝に光ってもすぐ消える。
煙も上がって、すぐ薄くなる。つまり、人の命もそこに近い。画が強いんよ。やさしいポスターじゃなくて、墓地と火葬の煙をそのまま持ってくる。
ヒロシ
ヒロシ
急に画角が重い。唐揚げ食ってる場合じゃない。
コウキ
コウキ
兼好は言う。「世は定めなきこそいみじけれ」。この世は定まらないからこそ素晴らしい、ってこと。ずっと続くなら感動しない。
人が死なず、花が散らず、若さが減らず、恋が冷めず、全部ずっと固定なら、最初はうれしくても途中で味がしなくなる。終わるから見る。消えるから手を伸ばす。
しずく
しずく
うわ、ちょっと黙るやつじゃん。
コウキ
コウキ
さっきまで唐揚げにレモンかけるかで揉めてた飲み会に、現実がドンと来るわけ。お前も俺も、いつか最終回が来る。今日のこの席も、この顔ぶれも、この声のデカさも、ずっとは残らない。
だから急にグラスを置く。ふざけてた口が一回閉じる。
ひなの
ひなの
唐揚げから最終回、落差でむせる。
ひなのがむせて、しずくが水を渡す。
コウキ
コウキ
でもこれ、死ぬから諦めろって話じゃない。死ぬから今の露をちゃんと見ろ、って腹に一発入れてくる話。徒然草の無常は、暗いんじゃなくて、今この瞬間のピントを急に合わせてくる。

満開だけじゃない

コウキ
コウキ
で、この無常がそのまま美意識につながる。兼好は第百三十七章で「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」って言う。満開の桜だけ、雲ひとつない満月だけを見るものなのか。
いや違うだろ、ってこと。咲く前、散った後、雲の裏の月。そこにもちゃんと味がある。
ひなの
ひなの
それは分かる。満開だけ写真撮って帰るの、ちょっと浅い感じする。
コウキ
コウキ
満開は誰でも騒げる。集合写真みたいに分かりやすい。満月も分かりやすい。見た瞬間に、はいきれい、で終わる。
でも散った後の寂しさとか、咲く前のそわそわとか、雲に隠れた月を想像する感じは、ちゃんと見てるやつしか拾えない。兼好、そこを拾う。審査が細かい。
ヒロシ
ヒロシ
怖い審査員やな。満開だけ褒めたら落とされる。
コウキ
コウキ
人間にも刺さる。全盛期だけ褒めるのは簡単。モテ期、成功、若さ、肌ツヤ、玉の位置まで元気な時期。そこだけ見て最高って言うのは誰でもできる。
でも落ち目、別れ際、老い、負けた後の顔。そこに残る味を見るのが兼好。怖いけど、かなり本気で見てる。
ヒロシ
ヒロシ
玉の位置で老いを語るなwww
コウキ
コウキ
でもさ、ずっと満開って三日で怖くなるよ。桜が一年中モリモリ咲いてたら、初日は写真撮る。二日目は弁当食う。三日目には、これ造花ちゃう?って疑う。
飲み会も同じ。今日だけだから楽しい。毎晩これが永遠に続くって言われたら、三日目には全員、無言で枝豆だけむいてる。
しずく
しずく
永遠の飲み会、普通に地獄w
コウキ
コウキ
人は失わないと思ったものを雑に扱う。いつでも会える人には連絡しない。いつでも見られる景色は見ない。いつでもできると思ったことは、だいたいやらない。だから兼好は、露、煙、花、月を並べる。
全部、手元に縛れない。消えるから怖い。消えるからきれい。この二つが同じ根っこなんよ。
店の奥で皿がカンと鳴る。
コウキ
コウキ
兼好は永遠をくれない。その代わり、今の輪郭をくっきり見せてくる。

飲み会でこう話す

コウキ
コウキ
だから飲み会で徒然草を語るなら、最初の一発はこれでいい。七百年前の坊主が、暇すぎて硯の前で一日中メモってたら、なんか変なテンションになってきたって自白する本。
これで場があったまる。古典の入口それなん?ってなる。
ヒロシ
ヒロシ
それなら聞くわ。坊主のメモアプリやん。
コウキ
コウキ
で、そこで終わらないのがずるい。暇、硯、変なテンション。
この三点セットで笑わせておいて、次に人間の見栄を見せる。あいつ偉そうだけど薄いな、あの欲はダサいな、でも俺も同じだなって、笑いながら首根っこをつかまれる。
ひなの
ひなの
笑ってたら捕まるの怖いw
コウキ
コウキ
さらに奥に行くと、あだし野の露、鳥部山の煙。ここで全員の顔から余裕が消える。さっきまで、つれづれって暇なんだって笑ってたのに、十分後には、人はいずれ消える、まで連れていかれる。
雑談の速度じゃない。徒歩で出たのに急に高速道路に乗ってる。
しずく
しずく
情緒の移動距離えぐい。
コウキ
コウキ
そして最後に、満開だけ見るなって来る。勝ってる時だけ、若い時だけ、きれいに整ってる時だけありがたがるなって。散った後、雲の裏、別れ際、老い、負けた顔。
そこまで見て初めて、今がどれだけ短いか分かる。兼好、暇人のふりして、人間の逃げ道をふさいでくる。
じゃあ最後。で、こいつ最終的に読者に何を突きつけたと思う?暇すぎてメモを書き始めた坊主が、七百年後の俺らに何を置いていったと思う?
ヒロシ
ヒロシ
締切?
ひなの
ひなの
おすすめの硯?
しずく
しずく
人生の見え方とか?
コウキがグラスを置き、全員が少しだけ黙る。
コウキ
コウキ
命の賞味期限。
ヒロシ
ヒロシ
重っ。でもうまっ。
ひなの
ひなの
もう、つれづれって聞いたら笑うし、ちょっと黙る。ずるい。
コウキ
コウキ
それが徒然草。笑って入って、墓場の露で静かになって、帰り道に月が違って見える。兼好、飲み会の締め方がうまいにもほどがある。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. つれづれなるままにつれづれなるままに

    徒然草の出だし。暇すぎる心から名作が始まる。

  2. 硯に向かひてすずりにむかいて

    筆を取って書き始める場面。古文の出だしとして強い。

  3. 心にうつりゆくよしなし事こころにうつりゆくよしなしごと

    頭に浮かんでは消えるどうでもいいこと。そこを拾うのが随筆。

  4. あやしうこそものぐるほしけれあやしうこそものぐるほしけれ

    書いていたら妙に変な気分になる、あの有名な締め。

よくある質問

Q. つれづれなるままにの意味は?
A. やることがなくて手持ちぶさたなまま、ってこと。序段では兼好が硯の前で一日中、心に浮かぶ取りとめないことを書いてる状態を言ってる。
Q. 徒然草の序段って何?
A. 徒然草のいちばん最初の章。暇で硯に向かい、どうでもいいことを書いていたら、自分でも変なテンションになってきた、という入口。ここで作品全体のゆるい口調が決まる。
Q. 徒然草の無常って何?
A. 人も物も同じまま残らず、移ろって消えるって考え。徒然草では、ただ暗い話じゃなくて、今この瞬間を濃く見せる力として出てくる。
Q. あだし野の露と鳥部山の煙は何を表す?
A. あだし野の露は墓地、鳥部山の煙は火葬を思わせる表現。露も煙もすぐ消えるから、人の命の短さや、この世の定まらなさを見せるたとえになってる。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★

暇すぎて書いただけ、無罪

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 共通一次試験(国語)1984古文

    出典: 徒然草(兼好法師)

    徒然草の一節が古文の読解素材として採られた回。マーク式で、傍線部の古語の意味、助動詞や敬語の解釈、傍線部の内容説明、本文の主旨に合う選択肢を選ぶ形が中心になる。

    答えの要点:正解の核は二つ。第一に重要古語を取り違えないこと。つれづれ(手持ち無沙汰)、あやし(不思議だ、または身分が低い)、いみじ(程度がはなはだしい、文脈で良くも悪くも訳す)、よし(情趣、または理由)、ものぐるほし(気が変になりそうなほど落ち着かない)。第二に徒然草は主語が省かれやすいので、動作主を文脈で補ってから選択肢を切ること。内容合致問題は、兼好の主張(終わりがあるからこそ趣がある、移ろいを肯定する)とずれた断定的な選択肢が誤答になりやすい。

  • 早稲田大学2017国語(古文)

    出典: 徒然草(兼好法師)

    徒然草が古文の読解問題の素材に選ばれた回。私大型らしく、傍線部の解釈、空欄補充、文脈把握に加えて、作品や作者を問う文学史の知識も絡めて出されやすい。

    答えの要点:読解では傍線部の前後で主語と心情を確定させ、兼好が何を良し悪しと見ているかを取り違えないことが要点。文学史で確実に得点するための核は、徒然草は随筆であること、成立は鎌倉時代の末から南北朝のころ、作者は兼好法師(吉田兼好)、清少納言の枕草子と鴨長明の方丈記とあわせて日本三大随筆と呼ばれること。この四点を押さえれば作者名や成立時代、ジャンルを問う設問に答えられる。

  • 琉球大学2021国語(古文)

    出典: 徒然草(兼好法師)

    国公立の二次で徒然草が古文の素材に用いられた回。記述式で、傍線部を現代語訳させたり、なぜそう言えるのかを本文に即して説明させる問いが中心になる。

    答えの要点:現代語訳は、助動詞の意味(けり、ぬ、べし、なり など)と古語を一語ずつ正確に置き換え、省かれた主語を補って一文として通る日本語にすること。理由説明は、傍線部だけで答えず、その前後にある兼好の判断の根拠を本文から拾って因果でつなぐのが採点の核心。たとえば無常を肯定する箇所なら、もし永遠なら心を動かされないという前提を示し、終わりがあるから今が惜しく美しいという筋で書くと、兼好の論理に沿った解答になる。

  • 防衛大学校2024国語(古文)

    出典: 徒然草(兼好法師)

    近年の入試でも徒然草が古文の素材に選ばれた例。傍線部の内容把握と、その場面で書き手や登場人物がどう感じているかという心情の読み取りが問われやすい。

    答えの要点:心情の読み取りは、感情語そのものより、兼好がどんな人や振る舞いを良しとし、何を浅い、見苦しいと見ているかという評価の向きを押さえるのが核。徒然草は人間の見栄や執着を断罪せず突き放して観察する筆致なので、過度に道徳的な選択肢や、兼好が声高に怒っていると取る読みは外れやすい。無常を踏まえ、移ろうものをそのまま受け止めて今を見つめる、という落ち着いた態度を軸に据えると、内容把握も心情把握も筋が通る。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1序段で兼好は、心に浮かぶどうでもいいことを書き連ねるうちに「あやしうこそものぐるほしけれ」と記す。この一文で兼好が自分の文章や心の状態をどう捉えているかを現代語で説明し、なぜわざわざこの自己評価を書き残したと考えられるか、あなたの考えを百二十字程度で述べよ。

問2第百三十七段で兼好は「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」と問いかける。ここに表れた美意識を一文で要約したうえで、現代の生活から具体例を一つ挙げ、その美意識がどう当てはまるかを百五十字程度で説明せよ。

問3第七段の「あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ち去らでのみ」について、あだし野の露と鳥部山の煙がそれぞれ何を連想させるかを答え、そのうえで兼好が「世は定めなきこそいみじけれ」と無常をむしろ肯定的に述べた理由を、あなたの言葉で説明せよ。