第3夜 徒然草 その4
鼎をかぶって抜けない法師。宴会の悪ノリの末路
飲み会で一番ウケた坊さんが、その直後に頭へ金属鍋を装着したまま救急案件になる話。寺の打ち上げ、酒、若者の門出、横に三本足の金属器。ここで普通は触らない。でもこいつはかぶる。しかも踊る。爆笑を全部かっさらう。で、抜けない。医者も無理。最後は耳と鼻を犠牲にして命だけ帰ってくる。ちんこ出してないだけでノリは完全に裸芸の一歩手前。徒然草第53段、千年前のクソ鍋ヘルメット坊主、今でも普通に怖いwww
仁和寺の法師はなぜ鼎をかぶったのか?

コウキ
最初に言うけど、これ古典のありがたい話じゃないからな。寺の飲み会で一発芸が命の危機まで行く話。舞台は仁和寺。今も京都にちゃんとある有名な寺。
で、そこで童、つまり寺にいる若いやつが正式に法師になるから、その名残の宴をやってたわけ。今で言うと研修最終日の打ち上げ。今日で一区切りだし、飲むぞ、何かやれよ、みたいな最高にクソ危ない空気。

ひなの
寺でもその空気あるのやばwww

コウキ
あるんよ。人間、場所が寺でも酔ったらだいたい同じ。で、横に鼎がある。かなえって読む。
これ、ただの鍋じゃなくて、三本足の重い金属の器。昔のちゃんとした道具だから固いし、変な形だし、頭に乗せるための物では絶対ない。普通は、重そう、危ない、触るな、で終わり。

ヒロシ
そこで終わらないのがもう嫌な予感しかしない。

コウキ
終わらない。酔った法師の頭の中で会議が始まる。これ、頭に乗るんちゃうか。
しかも周りも酒入ってるから、止める人がいない。酔うと全員でブレーキ役が消えるんよ。で、こいつは今日の主役を若い童から金属鍋へ強奪しに行く。
宴席の目線が、若い法師から金属の器へ移る。

コウキ
ここで誕生するんよ。鍋ヘルメット坊主が。
鼎を頭にかぶって踊ると何が面白かったのか?

コウキ
かぶり方がまた最悪なんよ。スポッじゃない。鼻を押しつぶして、顔をぐいっと中へ差し入れる。
ミチミチ、鼻ぺたん、顔面ぎゅうぎゅう。ここが大事で、この無理な入れ方のせいで、あとで耳と鼻が内側に引っかかって抜けなくなる。つまり入れた瞬間から事故の予告編は始まってる。

しずく
もうその時点でやめてほしいw

コウキ
でも本人は、いけるいける、みたいな顔。いや顔は金属の中で見えないけど、絶対その顔。で、みんなに聞くわ。こいつ次に何したと思う? 外す? 反省する? 座って水飲む?

ヒロシ
普通に外す一択やろ。

ひなの
せめて誰か止めてw
一拍、変な沈黙。

コウキ
踊るんだよ。踊り出すの。頭に三本足の金属器、顔は中で圧縮、しかも本人は坊さん。
寺の宴会場で、鍋ヘルメット坊主が、うぉい、うぉい、みたいに舞う。もう寺に湧いた調理器具のお化け。そりゃ全員笑う。

ヒロシ
鍋ヘルメット坊主wwww

しずく
画が強すぎるwwww

ひなの
これは悔しいけど笑うwww

コウキ
ここまでは優勝なんよ。道具一個で場を持っていく。身体張りすぎ。ちんこ見せてないだけで、精神は完全に裸踊りと同じ土俵。
現代なら全員のスマホに残って、翌朝から鍋の人って呼ばれるやつ。でも宴会芸には出口がいる。笑いのピークのあと、本人が、じゃ外すか、ってなった瞬間、ジャンルがコメディから医療ドラマに変わる。
笑い声の熱だけが、まだ部屋に残っている。

コウキ
鍋坊主、ここから回収不能になる。
仁和寺の鼎事件はどこから地獄になるのか?

コウキ
最初はまだ笑ってる。おい抜けないのかよ、やめろやめろ、みたいな軽いやつ。ひとりが引く。抜けない。もうひとりが来る。
抜けない。中の本人は、んごごごご、って言ってる。でも金属の器で声がこもるから何も伝わらない。会話不能の鍋。

ひなの
会話不能の鍋、最悪すぎるwww

コウキ
そこで出てくるのが、ことさむ。これは、その場の盛り上がりが冷める、座が白けるって意味。
さっきまで、やばいやばい、天才、って沸いてた宴席が、抜けないって気づいた瞬間にスンッてなる。笑いの部屋から、急に救急の部屋になる。

ヒロシ
そのスンッ、怖いわ。

コウキ
しかも抜こうとするほど悪くなる。引っ張ると首まわりが傷つく。血が出る。腫れる。
腫れると金属とのすき間がさらに消える。つまり、頑張れば頑張るほど出口が狭くなる。これ素で地獄。力技で解決しようとして、逆に詰んでいくやつ。
じゃあ割ればいいじゃんってなる。でも鼎は重い金属の器。簡単に割れない。叩くとゴンッて響く。外は金属、内側は法師の頭。
本人からしたら、頭蓋骨の外で除夜の鐘を鳴らされてるようなもん。ゴンッ。中から、んごごごご。誰にも伝わらない。

しずく
笑ってた側も急に青ざめるやつ。

コウキ
そこが人間くさいんよ。さっきまで拍手してた連中が、急に心の中で逃げ道を探す。
誰がかぶせた? 本人が勝手にやったよな? 俺は笑っただけだよな? 会社で備品壊した翌朝の空気と同じ。みんな急に昨日の自分だけ薄くする。
金属の中で、息だけがこもる。

コウキ
鍋坊主、芸人から事故物件になる。
医者に連れて行っても鼎は抜けなかった?

コウキ
で、もう寺の中では無理だってなって、京の医者へ連れて行く。ここ、画が強すぎる。三本足の金属器を頭にかぶった法師に布をかけて隠す。いや隠せてない。
出っ張りも形も全部おかしい。街の人は当然ガン見。寺から顔のない金属頭の人が歩いてくるんだから、そりゃ見る。

ヒロシ
二度見どころじゃないわ。

コウキ
医者の前に座らせる。医者も最初は、風邪か腹痛かと思うじゃん。入ってきた患者、鼎。症状、鼎。
主訴、鼎が抜けない。問診したくても顔が器の中だから表情も見えない。本人が喋っても、んごごごご。医者からしたら情報が全部金属で遮断されてる。

ひなの
医学書に鼎の章ないわw

コウキ
ほんとそれ。医者は、こういう例は医学書にも載ってないし、伝わってる治療法もない、って匙を投げる。要するに、これは知らん、うちでは無理、って断る。
だから鍋坊主は仁和寺へ送り返される。京のプロに見せても、寺に戻される。ここで笑いがかなり冷える。

しずく
戻されるのしんどいな。

コウキ
しかも寺へ戻ると、親しい人たちが集まる。老いた母親まで枕元に来て泣く。これがきつい。
悪ノリって仲間内なら武勇伝みたいに言える。でも母親が泣いた瞬間、全部請求書になる。鍋ヘルメット代、医者に断られ代、親不孝代、全部乗せ。

ヒロシ
急に現実の重さ来るな。

コウキ
笑いを取った本人は、まだ金属の中。返事もまともにできない。さっきの拍手、もう誰も覚えていたくない。
耳鼻が欠けても命があればという結末とは?

コウキ
最後、誰かが腹をくくる。耳と鼻はもう諦める。でも命だけは拾おう。
そういう乱暴な判断になる。きれいごとじゃなくて、顔のパーツよりまず命、っていう最終ライン。さっきまで宴会芸だったのに、ここまで来る。

ひなの
怖すぎる。もう笑いの値段じゃない。

コウキ
やり方もえぐい。藁みたいなものを首まわりに差し込んで、金属と皮膚の間にちょっとでも逃げ道を作る。そこから全員で引く。寝かされた法師。頭には鼎。周りの大人たち。
泣く母親。せえの。ギチギチギチ。首がちぎれそうなほど引く。中では、んごごごご。
金属が、ようやく動く。

コウキ
抜ける。抜けるけど、ただじゃない。耳と鼻を損なって、辛うじて命だけ助かる。
そのあと長く寝込む。踊ってウケて、抜けなくなって、医者にも無理って言われて、最後は顔の一部を犠牲にして生還。鍋坊主、人生で一番高い笑いを取ってる。

しずく
鍋坊主、一生忘れないwww

コウキ
で、兼好法師の語り方がまた怖い。兼好は徒然草を書いた人なんだけど、ここで、みんなも悪ノリには気をつけよう、みたいな教訓の紙芝居にしない。仁和寺の法師が鼎をかぶった。踊った。みんな笑った。抜けなかった。医者も無理。
耳と鼻を犠牲に助かった。起きたことを置くだけ。だから読んだ側が勝手に考える。見栄って怖いな。場の空気って怖いな。ウケたい欲って、たまに人を金属に突っ込ませるんだなって。
あと混ざりやすいから言っとくと、これは徒然草第53段。ひとつ前の第52段にも仁和寺の法師が出るけど、そっちは石清水八幡宮へ行く別の失敗談。第53段は鼎のほう。
徒然草は枕草子、方丈記と並ぶ日本三大随筆のひとつで、その中でもこの話は屈指の失敗談。古典の顔してるけど、中身は千年前の飲み会事故報告書なんよ。

ヒロシ
千年残る飲み会事故、強すぎる。
鍋坊主の三本足だけが、頭に残る。

コウキ
一番ウケたやつが、一番高い会計を払った。
暗記用
これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ
口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。
鼎(かなえ)
足つきの鍋。これを頭にかぶる悪ノリが事件になる。
悪ノリ(わるのり)
この段の本質。笑いのつもりが普通に救急案件へ行く。
仁和寺の法師(にんなじのほうし)
徒然草で何度もやらかす寺の人たちとして覚えると便利。
宴の興(うたげのきょう)
宴会の盛り上がり。盛り上げようとして失敗する怖さがある。
よくある質問
- Q. 徒然草の鼎って何?
- A. 鼎は、三本足の重い金属の器。第53段では仁和寺の法師が宴会の悪ノリで頭からかぶって踊り、抜けなくなる地獄アイテム。
- Q. 仁和寺の鼎の話は徒然草の何段?
- A. 徒然草第53段。第52段の石清水八幡宮へ行く仁和寺の法師とは別の話で、こっちは鼎を頭にかぶる鍋坊主の話。
- Q. 徒然草第53段は何が怖い話?
- A. 宴会のウケ狙いが、一瞬で命に関わる事故へ変わるところ。兼好法師が教訓で締めず出来事だけ置くから、場の空気や見栄の怖さがそのまま残る。
次に読む
もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★★
悪ノリで頭に鍋、救急沙汰までいって反省
- 刑法209条過失によって人を傷害した行為に関する規定(過失傷害)。
- 軽犯罪法社会生活上の軽微な秩序違反行為を取り締まる法律。
元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。
腕試し(オリジナル問題)
過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。
問1第53段で、法師がかぶった鼎が抜けなくなったのはなぜか。本文の経緯に沿って説明せよ。
問2この段で兼好法師は、はっきりした教訓のことばで話を締めくくっていない。その書き方がもたらす効果を、あなたの考えで述べよ。
問3本文中の「酒宴ことさめて」について、「ことさむ」の意味を示し、この一語が場面のどんな転換を表しているか説明せよ。