第3夜 徒然草 その1

兼好法師って誰。世を捨てたのに人間観察がやめられない男

兼好法師って、出家して悟った顔の人だと思うじゃん。違うんよ。世を捨てたあとも、人間のクソダサい瞬間だけはめちゃくちゃ見てる。宮中で空気読みの世界を見て、髪を剃って仏の道に入って、それでも見栄、欲、酒で崩れる人、肩書きで大きく見せる人を逃がさない。七百年くらい前の人なのに、令和の飲み会にも刺さる。端で静かに飲んで、最後の一言だけ一番痛いやつ。

兼好法師とは誰なのか

コウキ
コウキ
兼好法師ってさ、古文の棚に置くには目つきが鋭すぎるんよ。徒然草を書いた人で、元は宮中、つまり天皇のまわりの職場に仕えてた。
そこって上品そうに見えて、身分、作法、顔色、空気読みのバトルだらけなわけ。笑顔で座ってるけど、内心は誰が上かずっと測ってる。
ヒロシ
ヒロシ
上品な職場こわいなwww
コウキ
コウキ
で、そのあと出家する。出家って、髪を剃って仏の道に入ることね。
普通なら、もう人間のゴタゴタは見ません、山にこもって雲でも見ます、って流れじゃん。世間から距離を置く隠者って聞くと、心が静かな人を想像するじゃん。
コウキが声を少し落とす。
コウキ
コウキ
でも兼好、そこから人のクソダサさだけはガン見なんよ。あいつ見栄張ったな、あの若者いきったな、あの坊さんきれいな人アピールしてるな、って逃がさない。
世を捨てたのに、人間への興味だけ残ってる。未練ありすぎだろって話。
ひなの
ひなの
捨てたのにめっちゃ見てるじゃんwww
コウキ
コウキ
大事なのは、兼好が世間と完全に切れた人じゃないってこと。宮中で人のふるまいを見て、出家して距離を取って、そこからさらに見えた。
近くにいると流されるけど、ちょっと離れると、あれ全部芝居だったんだなってわかる。
しずく
しずく
待って、静かな顔で見抜いてくるの嫌すぎる。
コウキ
コウキ
そう。しかも怒鳴らないのが怖い。端で氷をカランって鳴らして、さっきの自慢、ちょっとちんこ小さかったね、って言うタイプ。怒鳴らない、静かに刺すタイプが一番こわい。

吉田兼好と卜部兼好は同じ人なのか

コウキ
コウキ
で、名前がまたややこしい。調べると吉田兼好って出てくるし、学校でもその名前で聞くことが多い。でも出家前の名前、俗名は卜部兼好とされる。俗名って、仏の道に入る前の普通の名前ね。
ひなの
ひなの
いきなり名字トラップじゃんwww
コウキ
コウキ
卜部って家は、朝廷の公式行事や神さまに関わる行事に関係した家として知られてる。つまり、ただのそのへんの人じゃなくて、ちゃんと古いルールや儀式の世界にいた人なんよ。
だから宮中の空気を見てた、って話にもつながる。
ヒロシ
ヒロシ
背景が濃いな。普通にめんどそうな家やな。
コウキ
コウキ
で、兼好は出家後の名前。法名っていう、仏の道に入ったあとに使う名前だね。
吉田兼好って呼び方は、後の時代に広まった名として説明されることが多い。だから飲み会で言うなら、吉田兼好で通じるけど、実は卜部兼好とも言う、くらいで押さえればいい。
しずく
しずく
本人もう、どっちでもええわって顔してそう。
コウキ
コウキ
そこが人間くさいんよ。本人は肩書きも家も置いて世間から降りたつもりなのに、後の人たちが、いや名前はどれですか、家はどこですか、って名札を貼り直す。
肩書きを捨てた人にまで肩書きを貼りに行く。人間の執念すごい。
ヒロシ
ヒロシ
名字トラップ、最後に人間の怖さまで来たwww

徒然草の作者は何を書いたのか

コウキ
コウキ
徒然草ってタイトルからしていい。つれづれって、やることなくて心が落ち着かない感じ。予定ない休日に、何もしてないのに夕方だけ来る、あの嫌な感じに近い。
ひなの
ひなの
それ一番しんどいやつwww
コウキ
コウキ
有名な出だしも、つれづれなるままに、日暮らし、すずりに向かって、みたいなやつ。すずりは墨をする文房具ね。今の感覚で言うと、暇だから一日中机に向かって、頭に浮かんだことを書いた、ってこと。
最初から堂々と暇宣言。履歴書に特技、ぼんやり、って書く胆力。
ヒロシ
ヒロシ
採用担当が止まるわ。
コウキ
コウキ
でも中身はゆるくない。徒然草は随筆って呼ばれる。随筆って、一つの長い物語じゃなくて、短い話や考えが章ごとに並ぶ本。
全部で二百四十数の章があって、人生メモ帳みたいに読める。しかも枕草子と方丈記と並んで、三大随筆って呼ばれる一つ。要するに古典界の有名どころなんよ。
しずく
しずく
暇から始まって有名どころまで行くの強いな。
コウキ
コウキ
で、兼好の怖いとこは、仏の話をしてる空気でも、人間のズッコケを見逃さないとこ。で、こいつ次に何見たと思う。悟りの光か。仏の声か。
ヒロシ
ヒロシ
金色の光とか来るんちゃう。
ひなの
ひなの
謎の鐘が鳴るとか。
一拍置いて、コウキが笑う。
コウキ
コウキ
違う。家の作り、酒で崩れる奴、偉い人のふるまい、若者のいきり。めっちゃ地上。めっちゃ生活。
仏の道の話かと思ったら、飲み会の翌朝まで見てる。人生メモ帳。ただし開くと、自分の恥ずかしい発言に赤丸つけられる。

世を捨てたのになぜ毒舌なのか

コウキ
コウキ
ここが一番おもろい。世を捨てた人って、全部許す蓮の花みたいなイメージあるじゃん。怒らない、責めない、静かに微笑む。
でも兼好は違う。社会から一歩降りたからこそ、社会の変な芝居が丸見えになった人なんよ。
ヒロシ
ヒロシ
降りたのに見えすぎるの怖いな。
コウキ
コウキ
無常って言葉もよく出てくる。無常って、すべては変わる、ずっと同じものはないってこと。きれいに言うと花は散る、命ははかない。でも兼好の無常はもっと痛い。
今日のドヤ顔は明日の黒歴史。今日の流行り服は来年封印。今日の人脈自慢は帰りの電車で急に恥ずかしい。セックスの武勇伝も翌朝聞くとだいたい薄い。
ひなの
ひなの
急に全員ちっちゃくなるじゃんwww
コウキ
コウキ
だから徒然草って、ただの説教じゃないんよ。人のふるまいの観察が細かくて生々しい。
店員にだけ強い奴、知らない話を知った顔でうなずく奴、酒が入ると急に自分を大きく見せる奴。兼好はそういう瞬間を見て、人間ってそこで転ぶよね、って静かに言う。
しずく
しずく
優しいのか怖いのかわかんない。
コウキ
コウキ
で、こいつ次に何したと思う。慰めたと思う。抱きしめたと思う。
ヒロシ
ヒロシ
まあ人間やししゃあないで、って肩ポンやろ。
ひなの
ひなの
お茶ぐらい出してくれてもいい。
コウキがゆっくり首を振る。
コウキ
コウキ
その見栄、明日には恥ずかしいよ、って真顔で言うだけ。これが一番刺さる。怒ってない。慰めてもない。ただ、逃げ道のない本当のことを置いていく。
ヒロシ
ヒロシ
やめろや。昨日の俺が泣くwww

徒然草はいつ成立したのか

コウキ
コウキ
で、徒然草っていつできたのって話。ここは何年何月何日です、って一つに決まってる感じじゃない。成立時期は諸説あり。
鎌倉時代の終わりから南北朝のころにかけて、と説明されることが多い。南北朝って、朝廷が二つに割れて揉めた時期ね。つまり世の中がかなり揺れてた。
ひなの
ひなの
時代からして落ち着かなすぎる。
コウキ
コウキ
そんな時代に、すべては変わるよね、って言うのは重い。落ち着いたカフェで言う無常じゃない。揺れてる店でグラス押さえながら言う無常。そりゃ説得力ある。
ヒロシ
ヒロシ
こっちも瓶押さえるわ。
コウキ
コウキ
でも兼好は、時代の大事件だけを見る人じゃない。非常時でも人は小さい見栄を握る。肩書き、作法、家の造り、物知り顔、酒の飲み方。
世の中が荒れても、人間はどう見られるかに忙しい。ここ、今も変わらない。
しずく
しずく
非常時でも見栄は手放さないの、嫌にリアル。
コウキ
コウキ
しかも有名な一文に、家の作りやうは夏をむねとすべし、がある。言い換えると、家は夏を中心に考えろ。
冷房がない時代、冬は火や着る物でなんとかなるけど、夏の暑さと湿気は逃げ場がない。だから風通しを優先しろ、って話。
ヒロシ
ヒロシ
生活密着型すぎるやろwww
コウキ
コウキ
そこがいいんよ。悟りの本っぽい顔して、急に家の暑さ対策。仏の道から湿気へ直行。でも命に関わるのはまず暑さなんだよ。悟りより先に風を通せ。命の順番がわかってる。

兼好法師の何が今も刺さるのか

コウキ
コウキ
結局、兼好法師の魅力って矛盾なんよ。世を捨てた。でも世が気になる。仏の道に入った。でも人間のしょぼさを見たら黙ってられない。
すべては変わるって知ってる。でも美しいものにはちゃんと弱い。ここが人間くさい。完全に悟った顔の人って正しいけど、飲み会では盛り上がらないじゃん。はい立派、次ビール、で終わる。
ひなの
ひなの
立派すぎる人、こっちの背筋まで疲れる。
コウキ
コウキ
でも兼好はこっち側のダメさを知ってる。見栄を張る、欲が出る、老けるのが怖い、ちょっと粋に見られたい、忙しいアピールをする。令和ならSNSの見栄、寝てない自慢、人脈自慢、買っただけの本を背景に置く知性アピール。
形は変わっても中身は変わらない。だから今も読まれる。
ヒロシ
ヒロシ
本の背景、急に刺すなwww
コウキ
コウキ
徒然草が古びないのは、無常や美意識だけじゃなくて、人間観察が古びないからなんよ。肩書きの形は変わる。昔は家柄、今は会社名とかフォロワー数。
でも、大きく見られたい気持ちは同じ。兼好はそこを見てる。しかも静かに。
しずく
しずく
静かに見られるのが一番嫌だ。
コウキ
コウキ
で、今の飲み会に兼好がいたとする。端っこで静かに焼酎飲んでる。みんなが、最近まじ人脈広がっててさ、とか、俺あんま寝てなくてさ、とか言い出す。
で、こいつ次に何言うと思う。褒めるか。心配するか。
ひなの
ひなの
体は心配してほしい。
ヒロシ
ヒロシ
いや刺すで絶対。
氷がカランと鳴る。
コウキ
コウキ
その自慢、明日の朝にはだいたい恥ずかしいよ。
ひなの
ひなの
うわあ、刺さるwww
ヒロシ
ヒロシ
なんで昨日のワシ知っとんねんwwww
コウキ
コウキ
だから兼好法師って誰って聞かれたら、元宮中勤めで出家した隠者、徒然草の作者、俗名は卜部兼好、吉田兼好の名でも知られる人。そこまでは知識。でも飲み会で覚えるならこれ。
世を捨てたのに人間観察だけはやめられなかった男。しかも見てる場所がいちばん痛い。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. 兼好法師けんこうほうし

    宮仕えも出家もした、人間観察が鋭すぎる書き手。

  2. 卜部兼好うらべのかねよし

    兼好法師の俗名として押さえたい名前。

  3. 隠者いんじゃ

    世間から距離を置いて暮らす人。徒然草の視点を作る。

  4. 人間観察にんげんかんさつ

    兼好の武器。八百年前なのに今の飲み会にも刺さる。

よくある質問

Q. 兼好法師とは何者なの
A. 宮中に仕えたあと出家した隠者で、徒然草を書いた人。世を捨てた顔で、人間の見栄や欲をずっと見ていた男。
Q. 吉田兼好と卜部兼好は同じ人なの
A. 一般には同じ人物を指すよ。出家前の名前は卜部兼好とされ、吉田兼好という呼び方は後の時代に広まった名として説明されることが多い。
Q. 徒然草はどんな本なの
A. 一つの長い物語ではなく、短い話や考えが二百四十数の章に分かれて並ぶ随筆。人生メモ帳みたいに読める古典。
Q. 徒然草はいつ成立したの
A. 成立時期は諸説あり。鎌倉時代の終わりから南北朝のころにかけて成立した、と説明されることが多い。
Q. 徒然草はなぜ今も読まれるの
A. 無常や美意識だけでなく、人間観察が古びないから。肩書きや見栄の形は変わっても、中身は今の飲み会にもそのまま刺さる。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★

人間観察と毒舌だけ、罪はない

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 早稲田大学2017国語(古文)

    出典: 徒然草

    徒然草の一節を本文に、傍線部の古語の意味、助動詞などの文法、内容合致(本文の趣旨に合うか)が問われた。

    答えの要点:古文の徒然草で点を取る鍵は三つ。(1)古語を現代の意味で取らないこと。つれづれは退屈で手持ちぶさた、あはれはしみじみとした趣、ありがたしはめったにない、のように現代と意味がずれる語を古典の語義で訳す。(2)助動詞を文脈で見分ける。べしは当然や適当、けりは過去や詠嘆、なりは断定か伝聞、というように一語で意味が変わる。(3)兼好が何を言いたいかをつかむ。人の見栄や欲をさめた目で見て、無常(すべては移ろう)の感覚で評する、という視点で本文の主張を取れば内容合致の正誤も外しにくい。

  • 琉球大学2021国語(古文)

    出典: 徒然草

    徒然草の段を題材に、現代語訳や傍線部の解釈、本文全体の趣旨をつかむ力が問われた。

    答えの要点:現代語訳や傍線部解釈で正解する鍵は、まず主語(誰の動作か、誰の心情か)を補うこと。古文は主語が省かれるので、敬語の高さで人物の上下を見分け、誰が誰に向けた言葉かを先に確定する。そのうえで兼好が何を良しとし何を良しとしないか(出すぎた見栄や知ったかぶりをさめた目で批評し、控えめさや物事の本質を良しとする傾向)をつかむと、傍線部の意図と本文の趣旨がそろう。訳すときは古語の語義に忠実にし、現代語の感覚で意訳しすぎないことも要点。

  • 防衛大学校2024国語(古文)

    出典: 徒然草

    徒然草の文章を読ませ、語句の意味、文脈把握、筆者(兼好)の見方の読み取りが問われた。

    答えの要点:語句は古典の語義で取り、文脈把握では省略された主語と接続(逆接のどやどもなど)を丁寧に追うのが基本。筆者の見方の読み取りでは、兼好が具体的な人のふるまい(酒で崩れる、肩書きを誇る、知らないことを知った顔でうなずく)を例に挙げ、そこから人間の愚かさや無常を引き出す書き方をする点を押さえる。だから設問では、筆者が何を批判し何を良しとしているかを一文でまとめられれば、見方の問いに答えられる。批判の対象は出過ぎた見栄や見せかけ、評価するのは控えめさや物事の本質、という軸で読む。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1兼好法師は一般に「吉田兼好」とも呼ばれるが、出家前の俗名は何とされるか。家の性格(朝廷の儀礼や神事に関わる家)にも触れて答えよ。

問2徒然草は「三大随筆」の一つに数えられる。残り二つの作品名を挙げ、徒然草が随筆としてどんな構成を持つかを一文で説明せよ。

問3徒然草の一節「家の作りやうは夏をむねとすべし」は、住まいについてどのような考えを述べたものか。当時の生活も踏まえて説明せよ。