第1夜 ギリシャ神話 その4

神々の王ゼウス、王としては有能・夫としては最悪

世界の秩序は作れるのに自分のちんこは統治できない。ゼウスは雷で巨人を黙らせる王なのに、女を見た瞬間だけ牛、白鳥、黄金の雨へ即変身する。神話のトップが散らかす下半身から、英雄、王家、戦争、地名まで生まれる。

ゼウスはなぜ王として最強なのに夫として最悪なのか?

ユウマ
ユウマ
ゼウスは空と雷の神で、神々の王。父クロノスを倒したあと、世界の担当分けを決めて、巨人や怪物が来たら雷でドン、神々が揉めたら最後に場を締める。王としては普通に仕事ができる。
だからこそ落差がひどい。会社なら売上は作るのに、社内恋愛を全部めちゃくちゃにする社長。
だいすけ
だいすけ
仕事できる迷惑人間、いちばん扱いづらいwww
ユウマ
ユウマ
しかも嫁のヘラは結婚と家庭の女神。結婚を守る神を嫁にしながら、本人が一番外で女を見る。ここがゼウス神話の型なんだよ。
ゼウスが欲情する、門や親や予言や正妻が邪魔する、変身で突破する、セックスする、子が生まれる。その子が英雄、王家、地名、戦争の火種になる。下ネタが系図の根っこに刺さってる。
あおい
あおい
結婚の神の家庭が一番終わってるの、設定強すぎるwww
ユウマ
ユウマ
で、イオって女に手を出した時、ヘラにバレそうになる。ここでゼウス、謝るでも逃げるでもない。こいつ次に何したと思う?
だいすけ
だいすけ
土下座?
あおい
あおい
雲に隠れるとか?
ハル
ハル
まともな選択肢を期待した時点で負けな気がする。
ユウマがグラスを置く。
ユウマ
ユウマ
女を牛にした。世界は仕切れる。下半身は統治できない。

イオはなぜ牛に変えられて百目アルゴスに監視されたのか?

ユウマ
ユウマ
牛にされたのがイオ。人間の女性で、ゼウスが目をつけた相手。ヘラに怪しまれたゼウスは、イオを牛に変えてごまかす。証拠消しが牧場規模。スマホの通知を消す感じで人間を家畜にするなって話。
だいすけ
だいすけ
隠し方がデカすぎるwww
ユウマ
ユウマ
でもヘラも分かってる。あら、その牛かわいいじゃん、私にちょうだい、って奪う。完全に見抜いてる妻の顔。さらに百の目を持つアルゴスを監視につける。
アルゴスはパノプテスとも呼ばれて、要は全部見る者って意味。寝ててもどれかの目は開いてる。二十四時間ずっと見てる監視カメラが、生き物で来たと思えばいい。
ハル
ハル
怖い。家にいたら普通に寝られない。
ユウマ
ユウマ
ゼウスはそこで自分で謝りに行かない。ヘルメスを送る。ヘルメスは神々の伝言係で、口がうまくて足が速い便利屋みたいな神。
そいつが話や音楽でアルゴスを眠らせて、最後は始末する。浮気、牛化、監視、怪物退場。発端はゼウスのちんこ一本なのに、話の被害が広がりすぎる。
あおい
あおい
最初の原因だけ小さすぎて笑う。
ユウマが孔雀の写真を見せるふりをする。
ユウマ
ユウマ
しかもヘラはアルゴスの目を孔雀の羽へ移したって言われる。孔雀のきれいな模様、見方を変えるとゼウスの浮気の跡が残ってる。発端はちんこ一本、終点は孔雀。神話、遠くまで燃えすぎ。

エウロペはなぜ白い牛にさらわれて欧州の名前になったのか?

ユウマ
ユウマ
次はエウロペ。フェニキアの王女で、ゼウスがまた欲情する。今回も牛。ただしイオの時は証拠消しの牛、エウロペの時はナンパ用の白い牛。
牛の使い分けすな。しかも荒い牛じゃなくて、きれいでおとなしくて、触りたくなる牛。動物好きの善意を悪用してる。
あおい
あおい
白い牛がもう信用できないwww
ユウマ
ユウマ
エウロペがその牛に乗る。ここまでは絵本っぽい。王女、白い牛、海辺。で、こいつ次に何したと思う?
だいすけ
だいすけ
庭を一周?
ハル
ハル
そこで止まる神話なら平和なんだけどな。
全員が一瞬だけ牛を信じる。
ユウマ
ユウマ
海へ爆走してクレタ島まで拉致。ふれあい気分で乗ったら、目的地が海外。ここでエウロペはゼウスとの間に子を産む。その一人ミノスが、のちのクレタ王になる。
さらにエウロペの名前は、ヨーロッパという大陸名のもととして語られる。入試で聞かれたら、白い牛、クレタ島、ヨーロッパ、この三点を押さえれば勝ち。地名の入口が牛の拉致事件なの、真面目な地図に混ぜるには濃すぎる。
だいすけ
だいすけ
ヨーロッパの名前でその話出てくるの強すぎるwww

レダとダナエはなぜ白鳥と黄金の雨で英雄の母になったのか?

ユウマ
ユウマ
ゼウスの変身芸、まだ続く。次はレダ。スパルタ王テュンダレオスの妻として語られる女性で、ゼウスは白鳥になる。
白い牛の次に白い鳥。ギリシャ神話、白を信用できなくなる。湖に優雅な白鳥がいても、中身がゼウスなら最悪のアカウント乗っ取りだぞ。
だいすけ
だいすけ
白い生き物を見る目が変わるwww
ユウマ
ユウマ
レダの話からはヘレネが生まれる流れにつながる。ヘレネは絶世の美女って言われる人で、要は国同士がざわつくレベルの美人。のちにトロイア戦争の火種になる。
白鳥の一夜の置き土産が戦争。ゼウス本人は次の現場へ行くのに、世界だけ後処理を背負わされる。
あおい
あおい
ワンナイトのあとが重すぎる。
ユウマ
ユウマ
続いてダナエ。アルゴスの王アクリシオスの娘。父は、娘の子に殺されるって予言を聞いてビビる。だからダナエを青銅の部屋、つまり硬い金属の部屋に閉じ込める。
男が近づかなければ孫は生まれない。これで安心。で、ゼウスは次に何したと思う?
だいすけ
だいすけ
室内牛?
あおい
あおい
窓から白鳥?
ハル
ハル
もうまともな侵入が思いつかない。
ユウマが手を上からぱらぱら落とす。
ユウマ
ユウマ
黄金の雨になって入室。金色で降ってくるな。ダナエはペルセウスを産む。ペルセウスはのちにメドゥーサを倒す英雄になる。
しかも予言も逃げ切れない。成長したペルセウスが競技で投げた円盤が、たまたまアクリシオスに当たって死なせる。壁を厚くしても、雨で来た時点で運命は入室済み。玉座には座れるが、玉は管理できない。

ヘラの嫉妬はなぜ相手と子どもに向かったのか?

ユウマ
ユウマ
最後にヘラへ戻る。ヘラは結婚と家庭の女神なのに、家庭がギリシャ一荒れてる。夫は神々の王ゼウス。浮気相手は人間、王女、人妻、形は牛や白鳥や雨。
そりゃ怒る。ただヘラの怒りはゼウス本人だけじゃなく、相手の女と子どもにも飛ぶ。イオは牛にされて見張られたし、ヘラクレスも地獄を見る。
ハル
ハル
話が家庭内で終わらないのがきつい。
ユウマ
ユウマ
ヘラクレスはゼウスと人間の女性アルクメネの子。しかも名前にはヘラの栄光って意味が入る。名前だけ聞くとヘラに祝われてそうなのに、現実は逆。
赤ちゃんの寝室に蛇を送り込まれる話がある。ベビーベッドに蛇だぞ。育児グッズの売り場に絶対ないやつ。
あおい
あおい
赤ちゃん相手に本気すぎるwww
ユウマ
ユウマ
さらに後には狂気を送られて、ヘラクレスが妻子を殺してしまう話まである。筋肉で怪物を倒す最強英雄の出発点が、父の性欲と正妻の嫉妬。ここがギリシャ神話の濃さなんだよ。
ゼウスは権力、性欲、子を残したい本能のかたまり。ヘラは結婚、プライド、嫉妬のかたまり。その二人が夫婦だから、リビングの揉め事が大陸名になり、戦争になり、英雄の苦しみになる。
だいすけ
だいすけ
神の夫婦げんか、被害範囲が広すぎる。
一瞬だけ静かになる。
ユウマ
ユウマ
ゼウス、雷より先に下半身へ避雷針つけろ。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. 神々の王かみがみのおう

    ゼウスを一言で紹介する鉄板フレーズ。

  2. 黄金の雨おうごんのあめ

    ゼウスがダナエに会う時の変身ネタ。知ってると強烈に記憶に残る。

  3. エウロペえうろぺ

    ゼウスが牛になって近づく相手。ヨーロッパの名の由来にもつながる。

  4. レダと白鳥れだとはくちょう

    絵画でも有名なモチーフ。美術館トークで刺さる。

よくある質問

Q. ゼウスって何の神?
A. 空と雷の神で、神々の王。巨人や怪物を雷で黙らせるトップなのに、女性関係では牛、白鳥、黄金の雨まで出す。王として有能、夫として最悪。
Q. ゼウスはなんで姿を変えるの?
A. 女に近づくため、親や門や正妻の監視を抜けるため。変身してセックスし、子が生まれ、その子が英雄、王、戦争、地名につながるのがゼウス神話の型。
Q. エウロペとヨーロッパの関係は?
A. エウロペはフェニキアの王女。白い牛に化けたゼウスに乗せられ、海を渡ってクレタ島へ連れ去られる。その名がヨーロッパのもととして語られる。
Q. ヘラクレスはなぜヘラに狙われたの?
A. ヘラクレスがゼウスと人間の女性アルクメネの子だから。名前にはヘラの栄光という意味が入るのに、本人はヘラに蛇や狂気を送られて苦しめられる。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★★

王業は満点、私生活は前科だらけ

  • 刑法177条同意のない性交等を処罰する規定(不同意性交等)。
  • 刑法199条人を殺した者に科される罪の規定(殺人)。
  • 刑法204条人の身体を傷害した者を処罰する規定(傷害)。
  • 刑法220条不法に人を捕らえ、または閉じ込める行為に関する規定(逮捕監禁)。
  • 刑法226条所在国の外へ移送する目的で人を略取・誘拐する行為に関する規定。
  • 民法709条故意または過失によって他人の権利を侵害した者に損害賠償責任を負わせる規定(不法行為)。
  • ストーカー規制法つきまとい等の行為を規制する法律。

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 日本の大学入試 世界史・地理(共通テストほか)世界史・地理(ギリシア神話と地名の由来)

    出典: フェニキアの王女エウロペと白い牡牛に変身したゼウスの神話

    地名や文化の由来を問う設問で、「ヨーロッパ」という大陸名の語源として、白い牡牛姿のゼウスにさらわれた王女エウロペの神話が扱われる。彼女が連れ去られた先と、その子がどの王につながるかも合わせて問われる。

    答えの要点:答えの核心は三点。第一に、大陸名「ヨーロッパ」は、ゼウスにさらわれたフェニキア(現在のレバノン付近)の王女エウロペの名に由来すると語られること。第二に、白い牡牛に化けたゼウスが彼女を乗せて海を渡り、連れ去った先がクレタ島であること。第三に、エウロペがゼウスとの間に産んだ子ミノスが、のちのクレタの王ミノス(クレタ文明の象徴)につながること。この「エウロペ→ヨーロッパ」「上陸地クレタ」「子ミノス」を結べば、地名の由来を問う設問に答えられる。

  • 高校倫理・共通テスト 倫理(西洋思想の源流)倫理(ミュトスからロゴスへ)

    出典: ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスらの神話的世界観

    西洋思想の源流を問う設問で、ゼウスら神々の意志で世界の出来事を説明する神話的なものの見方(ミュトス)から、理性(ロゴス)で万物の根源を探る自然哲学への転換が扱われる。神話的世界観が哲学の何に当たるかを答えさせる形が多い。

    答えの要点:答えの核心は、ゼウスら神々の物語で自然や世界の出来事を語る見方を「ミュトス(神話)」と呼び、これが哲学の前段階に当たると押さえること。ここから、タレスらミレトス(イオニア)の自然哲学者が、神の気まぐれではなく理性「ロゴス」によって万物の根源(アルケー)を説明しようとした。タレスは根源を「水」とした。つまり「ミュトスからロゴスへ」の転換が西洋哲学の出発点であり、神話的説明はその対比となる前段階だと書けば正解になる。

  • A-level / IB 英語文学(English Literature)英語文学(詩の読解・分析)

    出典: W. B. イェイツの詩「Leda and the Swan(レダと白鳥)」

    白鳥に変身したゼウスがレダを襲う神話を題材にしたイェイツの詩を読ませ、形式(ソネット)、暴力的なイメージの効果、神の介入が歴史にもたらす結果といった主題や技法を分析させる。レダから生まれるものと、それがどんな出来事につながるかも問われる。

    答えの要点:答えの要点は三つ。第一に形式で、これは14行のソネットであり、その枠の中に突然の暴力的な場面が凝縮されている点に注目する。第二に主題で、白鳥(ゼウス)による一方的で暴力的な行為が、神の力が人間の歴史に強引に介入する象徴として描かれる。第三に結果の連鎖で、この行為からヘレネが生まれ、その美貌の奪い合いがトロイア戦争と街の崩壊を招く。つまり「神の暴力的な一瞬が、長い戦争と破壊という歴史を生む」という因果と、ソネット形式・終わりの問いかけ(修辞的な問い)の効果を指摘すれば、読解の核心を押さえたことになる。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1ゼウスは白い牡牛に変身してフェニキアの王女エウロペに近づき、海を渡ってある島へ連れ去った。(1)連れ去られた先の島の名と、(2)エウロペの名が後世に何の地名の由来として語られるかを答えよ。

問2ゼウスは浮気を隠すため、人間の女性イオを牝牛に変えた。ヘラはその牛を奪い、ある怪物に見張らせる。(1)見張り役となった怪物の特徴を述べ、(2)その怪物が最後どうなり、その目がどこに移されたと語られるかを答えよ。

問3アルゴス王アクリシオスは「娘の子に殺される」という予言を恐れ、娘ダナエを閉じ込めた。しかしゼウスはある姿に変じて忍び込み、子が生まれる。(1)ゼウスが変じた姿と、(2)生まれた英雄の名、(3)予言が結局どう実現したかを答えよ。