第1夜 ギリシャ神話 その6

ヘラクレス、親の火遊びのとばっちりで人生ハードモード

ヘラクレスって、怪力で怪物を倒す爽快ヒーローに見えるやん。でも中身は、父ゼウスのセックス、正妻ヘラの嫉妬、王様の無茶振りを、全部自分の体で受け止めた男なのよ。親のちんこ発の事故なのに、支払い担当だけ筋肉の赤ちゃんwww

誕生前から事故物件すぎる

ユウマ
ユウマ
ヘラクレスの人生、まず始まりがひどい。父親は神々の王ゼウス。母は人間のアルクメネ。で、このアルクメネにはちゃんと夫がいるのよ。
そこへゼウスが、本物の夫の姿に化けて来る。旦那そっくりの顔で近づいて、セックスして、生まれたのがヘラクレス。神と人間の子だから半神なんだけど、本人はまだオギャーしか言えないのに、父親のなりすまし不倫の責任者にされる。
だいすけ
だいすけ
赤ちゃんにコンプラ事故の始末させんなwww
ユウマ
ユウマ
ここでキレるのがヘラ。ゼウスの正妻で、しかも結婚の女神。結婚を守る担当の女神なのに、旦那はよその人妻に化けてセックスしてる。屈辱が二重なのよ。
旦那の浮気の子が赤ちゃんになって自分の家に届く感じ。普通ならゼウスに怒れよって話なんだけど、怒りの矛先が生まれただけのヘラクレスに向く。理不尽の配送先ミス。
あおい
あおい
トップなのに下半身だけ新人バイトじゃん。
ユウマ
ユウマ
さらに名前も皮肉でさ。ヘラクレスって、ざっくり言うと『ヘラの栄光』って意味だとされる。ヘラの怒りをなだめたい、ヘラに認めてほしい、みたいな願いが入った名前とも言われるんだけど、当のヘラ本人からは一生恨まれる。
嫌ってる女神の名前を背負って、その女神に狙われる。名札に店長だいすきって書いてるバイトが、店長から毎日詰められる状態www 生まれた瞬間から呪い付き。でもこいつ、赤ちゃんなのに初動が人間じゃない。
ユウマがグラスを置く。全員前のめり。

赤ちゃんの初仕事が蛇二匹

ユウマ
ユウマ
ヘラ、まず赤ちゃん暗殺にいく。ヘラクレスがまだ揺りかごにいるころ、蛇を二匹送り込むのよ。普通の赤ちゃんって、泣く、ミルク飲む、寝る、たまに天井をじっと見る、くらいじゃん。
そこに蛇二匹。もう育児じゃなくて事件現場。じゃあヘラクレス、どうしたと思う?
あおい
あおい
泣いて大人が来るまで耐えた?
だいすけ
だいすけ
ゼウスがやっと父親面して助けた?
ハル
ハル
せめて誰か来てあげて。
一拍。
ユウマ
ユウマ
赤ちゃんヘラクレス、両手で蛇をつかんで、ぎゅうって絞め殺す。wwww 初めてのおつかいじゃなくて初めての絞殺。母子手帳に、首すわり、寝返り、蛇二匹処理、って書くなそんなもん。
育児アプリも通知に困るよ。今週の成長、握力が異常、じゃないのよ。
だいすけ
だいすけ
チュートリアルでボス二体出すなwww
ユウマ
ユウマ
しかもこの場面、双子の兄弟イピクレスも一緒にいたって話がある。つまり同じ揺りかごまわりに、普通に怖がる赤ちゃんと、蛇を握って片づける赤ちゃんがいる。温度差がすごい。
怪力側がヘラクレス。親が朝見に行ったら、片方は泣いてて、片方の手元で蛇がしなしな。もう小児科じゃなくて警察呼ぶ絵。
で、ここで人生の型が決まる。上がやらかす。ヘラクレスの前に危ないものが来る。ヘラクレスが体で解決する。
すると周りが、あ、こいつなら次もいけるな、って雑に扱う。職場でパソコン詳しいって一回言ったら、全員のプリンタ設定が飛んでくるやつ。強いやつにだけ荷物が積まれる。ヘラも、あいつまだ生きてる、しかも蛇を潰した、ってなって何年経っても恨みが冷めない。

家族を持った瞬間に地獄が来る

ユウマ
ユウマ
ここから急に重い。飲み会で言うなら、全員いったん枝豆置くやつ。ヘラクレスは大人になって、メガラって妻と結婚する。子どももできる。やっと普通の幸せが来たっぽい。
怪物じゃなくて家族がいる。そこへヘラがまた来る。今度は蛇じゃない。ヘラクレスの頭に狂気を送って、正気を飛ばす。
あおい
あおい
体じゃなくて頭を壊しに来るの怖すぎ。
ユウマ
ユウマ
そう。蛇なら握れる。獅子なら締められる。でも頭の中に入ってくるものは殴れない。
ヘラクレスは正気を失って、自分の妻メガラと子どもたちを殺してしまう。ここは美談にできないし、悪党の計画としても片づけられない。ヘラに心を壊されて、気づいたら一番守りたいものを自分の腕で壊してる。強すぎる体が、最悪の方向に使われる。
店の音が少し遠くなる。
だいすけ
だいすけ
怪物よりヘラのほうが怖いわ。
ユウマ
ユウマ
正気に戻ったヘラクレスは、当然ボロボロになる。そこで罪をどうしたらいいか、神様のお告げを聞きに行く。要するに神様に『これから何したら償えるんだ』って聞きに行くわけ。
そこでミケーネの王エウリュステウスに仕えろ、難題をこなせ、という流れになる。これが十二の功業。家族を殺してしまった罪を清めるための、ほぼ死ぬような仕事十二個セット。
ハル
ハル
重すぎるし、仕事の数が多すぎる。
ユウマ
ユウマ
このエウリュステウスがまた嫌なのよ。現場に来ないのにチャットだけ強い上司みたいな王様。あれ倒してこい、これ捕まえてこい、ついでに掃除してこい。壊したのは上の神々、謝るのはヘラクレス、片づけるのも一番働けるヘラクレス。
神話版ブラック企業。しかも相手が、噛むと死ぬ、切ると増える、掃除してない牛小屋、最後は冥界の犬。そんな無茶振りする上司、普通に着信拒否されるやつwww

十二の功業、全部タスク名が狂ってる

ユウマ
ユウマ
まず有名なのがネメアの獅子。こいつ皮が硬すぎて、剣も矢も通らない。普通ならここで帰る。武器が効かないんだから。ところがヘラクレスは、じゃあ素手で首絞めるわ、ってなる。
発想が怖い。そして本当に締め落として、その皮をはいで防具にする。ライオン柄じゃない。ライオン本人を着る。
だいすけ
だいすけ
ファッションが捕食者すぎるwww
ユウマ
ユウマ
次がレルネの沼にいるヒュドラ。首が何本もある蛇の怪物で、首を切るとまた生えてくる。しかも増える話もある。仕事が片づくどころか倍に増えるやつ。ヘラクレスが切る、増える。切る、増える。
お前は未読メールか。そこで甥のイオラオスが助けに入って、切った口を火で焼く。焼けば生えてこない。最後はヒュドラの猛毒を自分の矢に塗って、あとで使う武器にする。敵の嫌なところまで持ち帰るの、たくましすぎる。
あおい
あおい
月曜朝のメールボックスじゃん。泣く。
ユウマ
ユウマ
十二の功業は怪物を殴るだけじゃない。エリュマントスの猪は殺せじゃなくて生け捕り。持ってこい系の面倒くささがある。ステュムパロスの人食い鳥は空にいるから、ただ走っても届かない。
ここでヘラクレスは、女神アテナにもらった青銅のガラガラみたいな音の鳴る道具を使う。ガラガラ鳴らして鳥を飛び立たせて、矢で落とす。つまり脳筋に見えて、ちゃんと道具も段取りも使う。筋肉だけじゃなくて、現場の工夫がある男なのよ。
ハル
ハル
殴るだけじゃないの、ちょっと好きになってきた。
ユウマ
ユウマ
そして俺が一番好きなのがアウゲイアスの牛小屋。ここで急に画面が汚くなる。長年掃除されてない牛小屋に、フンが山ほどたまってる。それを一日で片づけろ。
獅子、ヒュドラ、猪、鳥のあとに、うんこ。落差で首痛める。で、みんなならどうする?
だいすけ
だいすけ
業者呼ぶ。絶対に業者。
あおい
あおい
王に土下座して納期延ばす。
ユウマがにやっとする。
ユウマ
ユウマ
ヘラクレス、近くの川の流れを変えて、牛小屋にぶち込む。wwww スコップでちまちまじゃない。水の勢いで一気に洗い流す。
力任せじゃなくて、地形と水を使うのが肝なのよ。ルンバ買う感覚で河川工事すんな。フン掃除で土木事業を始める男、それがヘラクレス。

最後の依頼が冥界の犬を連れてこい

ユウマ
ユウマ
で、最後の依頼がケルベロス。冥界、つまり死者の国の入り口を守る三つ首の番犬。普通の番犬は玄関にいる。
ケルベロスは死後の世界の門にいる。そこへエウリュステウスが、連れてこい、って言う。犬の散歩頼むテンションで冥界の番犬を発注するな。
だいすけ
だいすけ
ペットショップに在庫ないやつwww
ユウマ
ユウマ
しかもヘラクレスは行く。冥界に降りて、王ハデスに許可を取る。ここも大事で、ただ暴れて盗むんじゃない。条件として、武器を使わずにやれ、みたいな話になる。
だからまた素手。ヘラクレスの素手への信頼、厚すぎる。で、こいつ次に何したと思う?
あおい
あおい
餌でなつかせた?
ハル
ハル
首輪三本用意した?
だいすけ
だいすけ
やっぱ無理って王に電話した?
箸が止まる。
ユウマ
ユウマ
力で押さえて、地上まで連れてくる。wwww 無茶振りした王様の前に、本当に地獄の三つ首犬をドン。エウリュステウスはビビる。
そりゃそうだよ。軽い気持ちで頼んだら、相手が冥界から納品してくるんだから。
あおい
あおい
命令した側が引くのダサすぎて笑うwww
ユウマ
ユウマ
しかもケルベロスはちゃんと冥界へ返す。ここがいい。ヘラクレスはただ殺しまくる男じゃない。持ってこいなら持ってくる。捕まえろなら捕まえる。
掃除しろなら川を曲げる。赤ちゃんのころは蛇、そこから獅子、ヒュドラ、猪、鳥、牛小屋のフン、最後は冥界の犬。全部こなす。でも原因をたどると、だいたいゼウスのセックスとヘラの嫉妬に戻る。腹立つよな。
ヘラクレスって、怪力英雄の爽快伝説に見えるけど、芯はかなり痛い。親の火遊び、神の嫉妬、王のパワハラを、全部肉体で受け止めた男。ゼウスはセックスして消える。
ヘラは怒る。王は無茶振りする。ヘラクレスだけが汗だくで納品する。
全員が吹き出す寸前。
ユウマ
ユウマ
ヘラクレスは英雄じゃなくて、神話界で一番強いクレーム処理係なんだよ。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. 十二の功業じゅうにのこうぎょう

    ヘラクレスの無理ゲー任務セット。これだけで話の骨格が立つ。

  2. ネメアの獅子ねめあのしし

    最初の怪物退治。倒した皮をそのまま装備にするのが強い。

  3. ヒュドラひゅどら

    首を切ると増える怪物。問題を処理したら増える時のたとえにも使える。

  4. ヘラの嫉妬へらのしっと

    ヘラクレスの不幸の根っこ。親の火遊びの請求書が子に来る。

よくある質問

Q. ヘラクレスって誰?
A. ゼウスと人間アルクメネの子。神と人間の子で、赤ちゃんのころから蛇を絞め殺すほど怪力だったギリシャ神話の英雄。
Q. なんでヘラに嫌われたの?
A. ゼウスが人妻アルクメネの夫に化けてセックスし、ヘラクレスが生まれたから。正妻で結婚の女神のヘラは、怒りをゼウス本人ではなく子どものヘラクレスへ向けた。
Q. ヘラクレスって名前の意味は?
A. ざっくり『ヘラの栄光』という意味だとされる。ヘラの怒りをなだめたい名前なのに、本人はヘラから一生狙われるのが皮肉。
Q. 十二の功業って何?
A. ヘラに狂気を送られて家族を殺してしまったヘラクレスが、罪を清めるためにエウリュステウス王の下でこなした十二の難題。獅子退治、ヒュドラ退治、牛小屋掃除、ケルベロス捕獲などがある。
Q. ケルベロスはどうなったの?
A. ヘラクレスが冥界でハデスの許可を取り、武器を使わず素手で押さえて地上へ連れてきた。そのあと殺さず、ちゃんと冥界へ返した。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★★

親の火遊びから受難まで一直線

  • 刑法177条同意のない性交等を処罰する規定(不同意性交等)。
  • 刑法199条人を殺した者に科される罪の規定(殺人)。
  • 刑法203条殺人など一定の罪について、未遂の段階でも処罰しうることを定める規定。
  • 刑法205条人の身体を傷害し、その結果死亡させた行為に関する規定(傷害致死)。
  • 刑法240条強盗が人を負傷させ、または死亡させた場合に関する規定(強盗致死傷)。
  • 民法709条故意または過失によって他人の権利を侵害した者に損害賠償責任を負わせる規定(不法行為)。
  • 鳥獣保護管理法鳥獣の保護・管理と狩猟の適正化を図る法律。
  • 動物愛護管理法動物の愛護と適正な管理について定める法律。

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • OCR GCSE Classical Civilisation(英国)「Myth and Religion」(科目コード J199、Paper J199/11)古典文明(神話と宗教、ギリシアの英雄)

    出典: 必修単元「The Universal Hero: Heracles/Hercules」のギリシア編。十二の功業、オリュンピアのゼウス神殿の彫刻、ホメロス風讃歌「獅子心のヘラクレスへ」など

    ヘラクレスを普遍的英雄として学ぶ必修テーマ。神殿彫刻や壺絵の図版を示して「ここに描かれた功業はどれか」「その功業を命じたのは誰か」を答えさせたり、ネメアの獅子退治の経緯を説明させる設問が、OCR公式のサンプル問題や採点基準で確認できる

    答えの要点:十二の功業を命じたのはミケーネ(ミュケナイ)の王エウリュステウス。ヘラクレスはヘラに送られた狂気で妻子を殺した罪を清めるため、この王に仕えて難題をこなした、という枠組みを押さえるのが核心。図版判別では各功業の目印を覚えておく。ネメアの獅子なら、皮が硬くて剣も矢も通らないので素手で首を絞めて殺し、その皮を防具としてまとう(だから獅子の皮をかぶった姿で描かれる)。説明問題では『武器が効かない→素手で絞殺→皮を剥いで身につける』の流れを自分の言葉で書けば得点になる

  • OCR GCSE Classical Civilisation(英国)「Myth and Religion」(科目コード J199、Paper J199/11)古典文明(神話と宗教、ローマでの受容)

    出典: 同単元のローマ編。オウィディウスとウェルギリウスに描かれるヘルクレス、ヘルクレスとカクスの神話、ネッソスの毒衣による死など

    ギリシアのヘラクレスがローマでヘルクレスとして受け継がれた姿を問う。ローマの守護者としてのヘルクレスと火を吐く怪物カクスの戦い、毒の衣による最期などを説明させる。試験官報告では、設問の趣旨からずれてカクスの逸話を答えても加点できなかった例にも触れられている

    答えの要点:ローマではヘラクレスはヘルクレスとして受け継がれ、町や人を守る守護者として崇められた、という受容の枠組みがまず核心。カクスの話を問われたら、火を吐く怪物カクスがヘルクレスの牛を盗み、足跡でばれないよう牛を後ろ向きに引きずって洞窟に隠したが、牛の鳴き声で見つかりヘルクレスに退治される、という筋を押さえる。最期を問われたら、ネッソス(ヘラクレスの毒矢で射られた半人半馬)の血を妻が愛のまじないと信じて衣に塗り、それを着たヘルクレスが毒に焼かれて苦しみ、自ら火葬の薪に身を投じて死に、神として迎えられる、という流れを自分の言葉で書く。設問が問うているのが受容なのか個別の逸話なのかを取り違えないことが採点上の要点

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1ヘラクレスがレルネのヒュドラと戦ったとき、首を切り落としても再生して増えてしまい苦戦した。(1)再生を止めるためにとられた方法と、それを助けた人物を答えよ。(2)戦いの後、ヘラクレスがヒュドラの体を利用して以後の戦いに活かしたものは何か。

問2アウゲイアスの牛小屋(長年掃除されず大量の家畜の糞が溜まっていた)を一日で片づけよ、という功業を、ヘラクレスは道具でかき出す以外の方法で達成した。その方法を説明せよ。

問3ヘラクレスという名は「ヘラの栄光」を意味すると言われるが、当のヘラはヘラクレスを生涯憎み続けた。(1)ヘラがヘラクレスを憎んだそもそもの原因を、彼の出生に即して述べよ。(2)ヘラがヘラクレスに送り込んだ災いを、幼少期と成人後で一つずつ挙げよ。