第1夜 ギリシャ神話 その7

ペルセウスとメドゥーサ、攻略法が完全にゲーム

父ちゃんが黄金の雨になって監禁部屋に侵入。そこから生まれた息子が、見たら即石になる怪物の首を刈って、帰り道で普通に武器として使う話。ギリシャ神話、初手から飲み会で誰かが箸を置く濃さ。

出生がもう事故

ユウマ
ユウマ
まずペルセウス、出生から事故ってる。父親はゼウス。空と雷のボスで、ギリシャ神話のトップ。母親はダナエ。王女。
ここだけ聞くと、はいはい王道英雄ねってなるじゃん。違うんよ。ダナエの父ちゃん、アクリシオス王が神託で言われるの。お前は娘の子ども、つまり孫に殺されるぞって。孫、まだ生まれてないのに殺害予告枠。
あおい
あおい
孫の予定が怖すぎる。名前つける前から敵じゃん。
ユウマ
ユウマ
王はビビって、娘を誰にも会わせなきゃ孫も生まれないじゃんって考える。で、ダナエを青銅の部屋に監禁する。青銅って、要は金属のガチ部屋。窓なし恋愛禁止ルーム。
でも相手がゼウス。あいつ扉から入る気がない。ここで問題。ゼウス、何になって入ったと思う?
だいすけ
だいすけ
鳥? 牛? あいつ変身だけは多芸だし。
あおい
あおい
煙とか? いやもう何でもありそう。
箸が止まる。
ユウマ
ユウマ
黄金の雨。金色の雨になって部屋に降り込んで、ダナエとセックスする。防犯カメラあっても映るの雨だけ。
で、生まれたのがペルセウス。密室から赤ちゃん出てきて、犯人が天気。警察も空を見上げるしかないwww
だいすけ
だいすけ
犯人が天気wwww 調書どう書くんだよ。
ユウマ
ユウマ
アクリシオス王は孫を直接殺すのも怖い。だからダナエと赤ちゃんペルセウスを箱に入れて海に流す。王様の発想が雑すぎる。荷物扱い。
だけど箱はセリポス島っていう小さい島に流れ着いて、母子は助かる。父親が雨、祖父が箱詰め発送。ペルセウス、人生スタートからひどい。

無理ゲーの発注

ユウマ
ユウマ
セリポス島でペルセウスは成長する。そこで島の王ポリュデクテスが出てくる。こいつがダナエに横恋慕する。
要はペルセウスの母ちゃんを狙ってる。邪魔なのは息子ペルセウス。母親を守る息子って、悪い男からしたら玄関の防犯ライトなのよ。
ハル
ハル
王様のくせにやってることが小さいな。
ユウマ
ユウマ
だからポリュデクテスはペルセウスを遠ざけたい。そこで言う。メドゥーサの首を取ってこい。頼み方が買い出しのテンション。牛乳、卵、あと即死怪物の首、みたいな顔すんな。
だいすけ
だいすけ
ブラック企業の発注なんよ。帰ってくる前提ないやつ。
ユウマ
ユウマ
で、メドゥーサが何者か。ゴルゴン三姉妹っていう怪物姉妹がいる。ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサ。このうちステンノとエウリュアレは不死。殺せない。メドゥーサだけが死ねる存在。
だから狙えるのはメドゥーサしかない。選択肢があるようで、実は一択。しかもその一択が、見たら石。視線を受けた瞬間、体が固まって石像になる。現地には正面から行って石になった奴らがいる。叫んだ顔、ビビった顔、そのまま展示。
あおい
あおい
現地の口コミが全部帰ってこないやつじゃん。
ユウマ
ユウマ
普通の英雄なら、うおおおって突っ込むじゃん。メドゥーサ相手にそれやったら、うおおおの口のまま石。熱血がオブジェになる。だからこの話の芯は根性じゃない。
目を合わせない知恵。勝つには腕力より段取り。見たら負けの相手に、どう見ずに近づくか。ここからペルセウスのやばさが出る。

準備こそ英雄

ユウマ
ユウマ
ここでペルセウスが偉い。普通なら逃げる。俺なら腹痛のフリして帰る。でもこいつは準備する。
アテナっていう知恵と戦いの女神が助ける。ヘルメスっていう神々の伝令、要はめちゃくちゃ足が速い連絡係の神も助ける。気合いの物語に見えて、急に段取りの物語になる。
まず居場所がわからない。じゃあどう聞き出したと思う? ペルセウスはグライアイっていう老婆三姉妹のところに行く。この三姉妹、目ひとつ、歯ひとつを三人で共有してる。ひとりが見て、ひとりが噛んで、受け渡しながら生きてる。
生活が怖すぎる。ペルセウスはその目と歯を渡す隙を押さえて、メドゥーサの居場所を聞き出す。情報戦から入ってるのが強い。
だいすけ
だいすけ
目を共有こわすぎ。今日の目、誰の番だよ。
あおい
あおい
歯ひとつも嫌だわ。焼き肉行けないじゃん。
ユウマ
ユウマ
そのあとニンフ、つまり神がかった女の精たちから道具をもらう。翼のサンダル。これは空を飛んで移動するため。キビシスっていう袋。これはメドゥーサの首を安全に入れて持ち運ぶため。
姿を隠す兜。これは見つからずに近づいて、見つからずに逃げるため。移動、収納、離脱。全部そろってる。首用の袋が最初からあるの、目的がはっきりしすぎて怖いけどな。
ハル
ハル
首用の袋って言葉がもう嫌すぎる。
ユウマ
ユウマ
で、一番大事なのがアテナの磨いた盾。メドゥーサは直視したら石。じゃあこの盾、どう使うと思う?
だいすけ
だいすけ
目つぶって突撃?
あおい
あおい
サングラス? 神話にサングラスないか(笑)
テーブルが一瞬だけ静かになる。
ユウマ
ユウマ
盾を鏡にする。磨いた盾にメドゥーサを映して、直接見ずに位置を取る。これが賢い。敵が強いから叫ぶんじゃない。
即死する条件を先に消す。目を見たら終わりなら、見ない仕組みを作る。ペルセウスは説明書を最後まで読むタイプ。こういう奴が一番生き残る。

討伐本番

ユウマ
ユウマ
いよいよ本番。ペルセウスは翼のサンダルでゴルゴンのところへ行く。そこにはメドゥーサがいる。髪は蛇。目を見たら石。まわりには石になった奴ら。
しかも姉二人もいる。ステンノとエウリュアレは不死だから、起きたら普通に終わり。メドゥーサは眠ってる。チャンスだけど、ミスったら石像。息をする音まで怖い。
ハル
ハル
緊張で手汗やばそう。
ユウマ
ユウマ
ここで何したと思う? 叫ばない。名乗らない。英雄っぽい演説もしない。盾の反射で位置を見る。直接顔を見ない。
そっと近づく。ヘルメス由来の鋭い刃で首を斬る。見ない、近づく、斬る、キビシスに入れる、撤収。動きがきれい。居酒屋で会計だけ異常に速い友達くらい無駄がない。
首が落ちた瞬間、話がまだ終わらない。
ユウマ
ユウマ
ここからもギリシャ神話が濃い。斬られたメドゥーサの血から、ペガサスっていう空飛ぶ馬と、クリュサオルっていう人物が生まれる。しかも父は海神ポセイドン。海の神。
メドゥーサとポセイドンの間の子どもが、首を斬られた血から出る。何それ。首を刈ったら馬が出るって、普通に意味わからんwww
だいすけ
だいすけ
なんで馬wwww
あおい
あおい
血から空飛ぶ馬は聞いてないってwww
ユウマ
ユウマ
しかも残った姉二人が追ってくる。そりゃそう。妹の首を袋に入れた男が逃げてるんだから。ペルセウスは姿を隠す兜で見つからず離脱する。
ここまで全部、勇気だけじゃない。見たい欲に負けない理性。怖いから見る、気になるから見る、そこを我慢した奴が勝つ。ペルセウスの勝因、目をそらすべき時にそらせたことなんよ。

首がチート武器で、返品がきれいすぎる

ユウマ
ユウマ
普通、ボス倒したら終わりじゃん。でもメドゥーサの首は死んだ後も能力そのまま。目を見た相手を石にする。
つまりペルセウスは怪物を倒しただけじゃなく、即死する首を持ち歩ける武器にした。危なすぎる。袋の中身、財布と鍵と石化ヘッド。
だいすけ
だいすけ
持ち物検査で一発アウトだろそれ。
ユウマ
ユウマ
帰り道でもこの首が効く。ペルセウスはアンドロメダっていう王女を助ける。海の怪物に生け贄として差し出されそうになってた王女。助けたあと、邪魔してくる相手にも首が効く。
見せたら石。さっきの天丼ね。犯人が天気の次は、解決が首。神話の治安どうなってんの。
あおい
あおい
解決が首は雑すぎるwww
ユウマ
ユウマ
そしてセリポス島に戻る。ポリュデクテス王がまだダナエに絡んでる。こいつ、ペルセウスを消すためにメドゥーサの首を取ってこいって言った張本人。で、ペルセウスはその張本人に何したと思う?
だいすけ
だいすけ
説教?
あおい
あおい
袋だけ見せて、あるけど? って煽る?
全員、笑う準備だけできてる。
ユウマ
ユウマ
首を見せる。王とその一味、石。これ以上きれいな返品ある? お前が取ってこいって言った首だぞ。確認しろ。
はい石。ポリュデクテス、嫌がらせのつもりで出した注文が、完成品として自分の顔面に届く。人生で一番受け取りたくない納品。
ハル
ハル
きれいすぎて笑うしかないな。
ユウマ
ユウマ
最後も気持ちいい。ペルセウスはメドゥーサの首をアテナへ渡す。アテナはそれをアイギスっていう自分の盾や胸当てに付ける。最初はアテナの盾でメドゥーサを直視せず倒した。最後はメドゥーサの首がアテナの盾側に付く。
攻略アイテムが、倒したボスの力で完成する。父親は黄金の雨でセックス、祖父は箱詰め発送、王は無理ゲー発注。でもペルセウスは腐らず、見たい欲を抑えて、必要な首だけ持って帰る。下品で残酷なのに攻略法だけ妙にスマート。そこが一番ずるい。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. メドゥーサめどぅーさ

    見た者を石にする怪物。名前だけで強い。

  2. ペルセウスぺるせうす

    鏡の盾でメドゥーサを倒す英雄。攻略法込みで覚えると話せる。

  3. 鏡の盾かがみのたて

    直視せず反射で勝つ道具。真正面から殴らない知恵の象徴。

  4. アンドロメダあんどろめだ

    ペルセウスに救われる王女。星座トークにもつながる。

よくある質問

Q. ペルセウスって誰?
A. ゼウスとダナエの子。メドゥーサの首を直視せずに斬り、アンドロメダを助け、母を狙ったポリュデクテス王を石にした英雄。
Q. ゼウスはなんで黄金の雨になったの?
A. ダナエが父アクリシオス王に青銅の部屋へ閉じ込められていたから。ゼウスは金色の雨になって部屋に入り、ダナエとセックスしてペルセウスが生まれた。
Q. メドゥーサを見るとどうなる?
A. 視線を受けた相手が石になる。だからペルセウスは顔を直接見ず、アテナの磨いた盾に映して位置を取り、首を斬った。
Q. ゴルゴン三姉妹って何?
A. ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサの怪物三姉妹。ステンノとエウリュアレは不死で殺せない。メドゥーサだけが死ねる存在だから、討伐対象になった。
Q. メドゥーサの首は最後どうなった?
A. ペルセウスがポリュデクテスたちを石にしたあと、アテナへ渡した。アテナはその首を自分のアイギス、つまり盾や胸当てに付けた。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★★

神々まとめて実刑コース

  • 刑法177条同意のない性交等を処罰する規定(不同意性交等)。
  • 刑法199条人を殺した者に科される罪の規定(殺人)。
  • 刑法203条殺人など一定の罪について、未遂の段階でも処罰しうることを定める規定。
  • 刑法204条人の身体を傷害した者を処罰する規定(傷害)。
  • 刑法218条高齢者や幼児、病者などを保護する責任のある者が、その保護を怠り遺棄等を行う行為に関する規定。
  • 刑法220条不法に人を捕らえ、または閉じ込める行為に関する規定(逮捕監禁)。

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 中学入試(首都圏私立・国立中の理科)理科(天体・秋の星座)

    出典: ペルセウスのアンドロメダ救出にまつわるエチオピア王家の星座群(アンドロメダ座・ペガスス座・カシオペヤ座など)

    秋の夜空の図やスケッチを示し、ペガススの大四辺形(秋の四辺形)を手がかりに、アンドロメダ座・ペガスス座・カシオペヤ座などの名前と形、見える方角や時刻を答えさせる問題。これらの星座は姫アンドロメダ、母カシオペヤ、天馬ペガサス、英雄ペルセウスというギリシャ神話の登場人物がそのまま空に並んだもので、神話を背景に星座の位置関係を整理させる出し方になっている

    答えの要点:目印は秋の南の空高くに見えるペガススの大四辺形(秋の四辺形)。四辺形の一つの角の星から北東へ星が連なる部分がアンドロメダ座で、その先に英雄ペルセウス座が続く。四辺形の北側、天の北極寄りにアルファベットのWの形に並ぶのがカシオペヤ座。秋の夜のはじめなら東から南の空に見える、と書ければ正解。星座が姫・母・天馬・英雄という神話の人物関係の順に並んでいる点を押さえるのがコツ。

  • イギリスの中等教育修了試験(GCSE English Literature, AQA)英語文学(詩の読解・分析)

    出典: キャロル・アン・ダフィーの詩「Medusa」(詩集『The World's Wife』所収、AQA詩集アンソロジーの収録作)

    メドゥーサ自身を語り手に、夫の心変わりを疑う女性の嫉妬と変貌を一人称で描いた現代詩について、詩人がどのように嫉妬や力、変身を表現しているかを分析させる問題。神話のメドゥーサ像を踏まえつつ、自由詩の形式、比喩、語りの視点、主題を読み解かせる出題になっている

    答えの要点:核心は、語り手がメドゥーサ自身で、愛する男の心変わりを疑う嫉妬から、自分の体が冷たく醜く変わり、見るものを石に変えてしまう怪物へと変貌していく心情を描いている、と読み取ること。神話では退治される側だった怪物を、裏切られて傷つき老いていく一人の女性の側から語り直す視点の反転がポイント。髪が蛇になる、息で生き物が石になるといった比喩が、嫉妬と老い、失われていく愛と力を表すこと、不規則な自由詩の形が感情の揺れを映していることを指摘できれば良い。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1ペルセウスはメドゥーサを直視せずに首を斬った。(1)直視を避けるために使った道具と方法を答えよ。(2)ゴルゴン三姉妹のうち、ペルセウスがメドゥーサだけを討伐対象にできた理由を、三姉妹の性質の違いから説明せよ。

問2ペルセウスはメドゥーサ討伐の前に、神々や精霊から情報と装備をそろえた。(1)居場所を聞き出すために交渉した、目と歯を共有する老婆の三姉妹の名を答えよ。(2)ニンフたちから得た三つの道具を挙げ、それぞれの役割を述べよ。

問3帰路でペルセウスは、海の怪物に生け贄として岩につながれた王女を救う。(1)助けられた王女の名と、彼女の両親である王・王妃の名を答えよ。(2)この救出劇の登場人物が、ある季節の夜空で星座の一群として並んでいる。何の季節の星座か答えよ。