第5夜 日本神話(古事記) その5

オオクニヌシ、モテすぎて兄80人に二回殺される

優しい男が白兎を助けたら、姫に選ばれ、兄八十人に殺された。しかも一回では終わらず、焼死して蘇生し、木に挟まれてまた死ぬ。オオクニヌシの人生、モテ期というより嫉妬で男どもがクソ化するサバイバルだ。

因幡の白兎、まず詐欺で失敗する

マサ
マサ
今回はオオクニヌシや。出雲の大物で、のちに国づくりを担う神。でも最初の見せ場は、白兎の治療なんよ。いきなり医療回や。
さやか
さやか
治療ならちゃんと聞く。
マサ
マサ
因幡に白兎がおった。この兎、島から本土へ渡りたい。そこで海のワニをだまくらかす。
ワニと言うても、サメのこととも言われる。兎は、お前らと兎の仲間、どっちが多いか数えようやと言って、ワニたちを海に並ばせる。その背中を数えるふりして渡る。
ヤマト
ヤマト
白兎、初手から詐欺師。
だいち
だいち
かわいい昔話かと思ったらだいぶ悪い。
マサ
マサ
渡り切る直前、兎はつい本音を言う。お前らをだまくらかして渡ったんや、と。ここがあかん。勝ち確で煽るやつ、だいたい終わる。ワニたちは怒って兎の皮を剥ぐ。
ヤマト
ヤマト
詐欺の成功報告を本人の前でやるな。バカすぎるwww
マサ
マサ
ほんまそれ。白兎は弱い被害者で始まるんやなく、先に悪知恵を使って失敗する。だからこそ、オオクニヌシの優しさが甘やかしじゃなく治療として出る。
さやか
さやか
皮膚が全部やられるのは本当に重傷。昔話のノリじゃない。
マサ
マサ
そこへ八十神っていうオオクニヌシの兄たちが通る。八十は数が多いって意味で、兄がめちゃくちゃおると思えばええ。彼らはヤガミヒメって姫に求婚しに行く途中や。
兎は助けを求める。兄たちは、海水を浴びて風に当たれと嘘の治療を教える。
ヤマト
ヤマト
最悪の民間療法。クソ医療すぎる。
マサ
マサ
当然、傷は悪化する。塩水と風やからな。そこへ荷物持ちをさせられて遅れて来たオオクニヌシが来る。兄たちのパシリみたいな立場や。
さやかが少し身を乗り出す。
さやか
さやか
そこで正しい処置をするんだね。
マサ
マサ
オオクニヌシは、真水で体を洗って、蒲の穂の花粉に寝転がれと教える。すると兎は元に戻る。古代の話やけど、塩を落として刺激を避けるという方向はわかる。少なくとも兄たちよりずっとましや。
だいち
だいち
優しいだけじゃなくて、ちゃんと助け方を知ってるんだ。
マサ
マサ
兎は予言する。ヤガミヒメは兄たちじゃなく、あなたを選ぶと。決めの一言。オオクニヌシのモテ期は、白兎の皮膚科から始まるんや。

姫に選ばれて兄たちに殺される

マサ
マサ
白兎の予言どおり、ヤガミヒメは兄たちを相手にせず、オオクニヌシを選ぶ。ここで兄八十人、ブチギレる。モテなかった怒りが集団で爆発する。八十人ぶんのちんこプライドがまとめて腐る。
ヤマト
ヤマト
恋愛敗北者ギルド。治安悪すぎる。
だいち
だいち
八十人で嫉妬するの怖すぎる。
マサ
マサ
兄たちはオオクニヌシを伯耆の手間山へ連れていく。赤い猪を追い落とすから、下で受け止めろと言う。実際に落としたのは、焼いて真っ赤にした大岩。オオクニヌシはそれを受けて焼け死ぬ。
だいち
だいち
赤い猪って言って、焼けた岩を落とすの、だまし方が残酷すぎる。
さやか
さやか
殺意が具体的すぎる。嫉妬でここまでやるのは本当に終わってる。
マサ
マサ
ここで母が泣いて、天の神に助けを求める。するとキサガイヒメとウムギヒメっていう貝の女神が来る。貝を削った粉と母乳みたいな汁で治療して、オオクニヌシは蘇生する。医療チーム二回目や。
ヤマト
ヤマト
このシリーズ、意外と救急搬送多いな。
マサ
マサ
蘇ったら普通、兄たちも反省すると思うやん。ここで聞くで。兄たち、次なにしたと思う?
だいち
だいち
謝る。
ヤマト
ヤマト
姫を諦める。
さやか
さやか
母に怒られて引く。
マサがゆっくり首を横に振る。
マサ
マサ
もう一回殺す。今度は大木に切れ目を入れて、そこにオオクニヌシを挟み込んで殺す。嫉妬の再犯率が高すぎる。モテなかった腹いせがクソすぎるんよ。
だいち
だいち
二回殺される主人公ってなかなかない。
マサ
マサ
母がまた助けて、オオクニヌシは逃げる。ここでわかるのは、オオクニヌシは力で兄たちを倒す英雄じゃない。殺される、助けられる、逃げる。その弱さ込みで残る神なんよ。
さやか
さやか
生き延びる英雄なんだ。
マサ
マサ
決めの一言。オオクニヌシの履歴書、特技より先に死亡歴二回って書きたくなる。

根の国でスサノオの娘と恋に落ちる

マサ
マサ
母は、ここにいたら兄たちにまた殺されるから、根の国へ行けと言う。根の国は地下の世界っぽい場所で、そこにはスサノオがいる。あのヤマタノオロチを倒した、元暴れん坊のスサノオや。
だいち
だいち
スサノオ、また出てきた。
ヤマト
ヤマト
うんこからオロチ、そして義父候補へ。経歴が濃い。
マサ
マサ
オオクニヌシは根の国で、スサノオの娘スセリビメに出会う。二人はすぐ恋仲になる。ここも早い。古事記の恋愛、マッチングしたら展開が速い。
さやか
さやか
でも父親がスサノオだと大変そう。
マサ
マサ
大変どころちゃう。スサノオはオオクニヌシを試す。まず蛇の部屋に寝かせる。スセリビメは蛇を払う布を渡して助ける。次にムカデと蜂の部屋。これもスセリビメの助けで切り抜ける。
ヤマト
ヤマト
義父の家、泊まりたくないランキング一位。
マサ
マサ
さらに野原へ鏑矢を射て、取ってこいと言う。オオクニヌシが探しに入ると、スサノオは野原に火を放つ。完全に殺しに来てる。義父の試練というより事件や。顔合わせの温度じゃない。
だいち
だいち
どうやって助かるの?
マサ
マサ
そこへネズミが出てきて、内はほらほら、外はすぶすぶ、みたいに教える。オオクニヌシは地面の穴に隠れて助かる。
矢もネズミが持ってきてくれる。小さいものに助けられるのが、オオクニヌシらしい。
ヤマトが焼き魚の骨を避ける。
ヤマト
ヤマト
この人、兎にもネズミにも縁あるな。
さやか
さやか
強い者を倒すより、弱い者や小さい者に助けられて進むんだね。
マサ
マサ
そう。オオクニヌシは腕力で全部突破するタイプちゃう。
優しさで兎に予言され、母と女神に蘇生され、恋人に助けられ、ネズミに救われる。人に貸しを作る天才というより、関係の網で生き残る神や。
さやか
さやか
助けられることが弱さじゃなく、後で国を作る力になっていく感じがある。
だいち
だいち
国づくりの神になるの、ちょっとわかってきた。
マサ
マサ
決めの一言。根の国の試練は、強さよりも、誰に助けてもらえる人間かを測ってるんや。

髪を柱に結んで逃げる国づくり男

マサ
マサ
試練を越えたオオクニヌシとスセリビメは逃げることにする。スサノオが寝てる間に、オオクニヌシはスサノオの髪を家の柱に結びつける。
しかも大きな岩で戸をふさぐ。義父を物理的に固定して駆け落ちや。
ヤマト
ヤマト
寝起き最悪すぎるwww
だいち
だいち
柱に髪を結ぶって発想がすごい。
マサ
マサ
さらにスサノオの宝物、太刀、弓矢、琴を持って逃げる。途中で琴が木に触れて鳴る。その音でスサノオが起きる。髪を柱に結ばれてるから家ごと引き倒す勢いになる。絵が強い。
さやか
さやか
スサノオ、暴れん坊だった側なのに今度は出し抜かれるんだ。
マサ
マサ
追いかけたスサノオは、黄泉比良坂みたいな境目まで来て叫ぶ。お前はその太刀と弓で兄たちを追い払え、そしてオオクニヌシとなり、スセリビメを正妻にして、立派な宮を建てて住め、と。
つまり最後は認めるんよ。
だいち
だいち
殺すんじゃなくて認めるんだ。
ヤマト
ヤマト
義父の最終承認、声でかそう。
マサ
マサ
オオクニヌシは地上へ戻り、兄たちを退けて国づくりを進める。ここでようやく、何回も殺された男が国土開発の中心になる。
腕っぷしだけの王じゃなく、助けられ、逃げ、恋をして、交渉して、土地をまとめる神や。
だいち
だいち
殺されても戻ってくるから、土地を諦めない感じが出るね。
さやか
さやか
国づくりって、土木だけじゃなく関係づくりなんだね。
マサ
マサ
せやねん。ただしモテる男なので、妻の嫉妬話もある。スセリビメが嫉妬して、オオクニヌシが歌でなだめる。
国を作る神でも、家では女の機嫌を取りにいく。古事記、神のちんこが作った揉め事をちゃんと家庭内調整まで描く。
だいちが小さく笑う。
だいち
だいち
国をまとめても家では揉める。
マサ
マサ
そこがええんよ。神話の大物が、急に夫婦の機嫌取りをする。地上を治める器と、妻に言葉を尽くす器が同じ話に入る。古事記は人間臭さを外さへん。
ヤマト
ヤマト
国づくりの祖、家庭内調整も必須。
マサ
マサ
決めの一言。履歴書の死亡欄が二回ある男が、日本の国土開発の祖になる。生き残ったやつが、最後に土地を作るんや。殺意を受けて、助けを受けて、逃げ道を知った男やから、人が住む場所を作れる。
強いだけの神なら土地を奪うだけで終わる。オオクニヌシは、傷のある神やから国を育てられる。白兎に手を貸した優しさが、最後は地上全体へ広がるんや。

暗記用

これだけ覚えたら、教養人の顔で会話に入れるフレーズ

口に出す時は、言葉と読みをセットで覚えると強い。

  1. オオクニヌシおおくにぬし

    2回殺されて2回生き返って国を作った男。出雲大社の祭神。

  2. 因幡の白兎いなばのしろうさぎ

    ワニを騙して皮を剥がれた兎。助けたのがオオクニヌシ。

  3. 八十神やそがみ

    オオクニヌシの大勢の兄たち。嫉妬で弟を2回殺す。

  4. スセリビメすせりびめ

    スサノオの娘。父の試練からオオクニヌシを助けて駆け落ちする。

よくある質問

Q. オオクニヌシとは誰か?
A. 出雲の国づくりを担う神だ。因幡の白兎を助け、兄たちに二度殺されながらも蘇生し、根の国の試練を越える。
Q. 因幡の白兎のあらすじは?
A. 白兎がワニをだまして海を渡り、皮を剥がれる。八十神の嘘の治療で悪化するが、オオクニヌシが真水と蒲の穂で治す。
Q. 八十神とは何か?
A. オオクニヌシの多くの兄神たちだ。ヤガミヒメがオオクニヌシを選んだため嫉妬し、二度も殺そうとする。
Q. スセリビメとは誰か?
A. スサノオの娘で、根の国でオオクニヌシと恋仲になる女神だ。蛇やムカデの部屋などの試練で彼を助ける。
Q. オオクニヌシはなぜ国づくりの神なのか?
A. 兄たちの迫害を越え、根の国から戻って地上を治め、土地を整える神として語られるからだ。武力だけでなく関係を結ぶ力が目立つ。

次に読む

もし現代でやったらコンプライアンス違反疑惑度★★★★

就活の倍率より兄たちの命の狙い方がえぐい

  • 刑法199条人を殺した者に科される罪の規定(殺人)。
  • 刑法204条人の身体を傷害した者を処罰する規定(傷害)。
  • 刑法220条不法に人を捕らえ、または閉じ込める行為に関する規定(逮捕監禁)。
  • 刑法235条他人の財物を盗み取る行為に関する規定(窃盗)。
  • 鳥獣保護管理法鳥獣の保護・管理と狩猟の適正化を図る法律。

元になった物語の出来事に、現代日本の実在する法令を当てはめたらどの条文に触れうるか、という読み物としての見立てです。条文番号だけを並べています。

入試に出た

この作品が実際の大学・高校入試でどう問われたかを、出典を明記して紹介します。

  • 大学入試 国語(文学史)・日本史(古代)の定番事項毎年多数の大学・共通テスト系で問われる頻出分野文学史・日本史

    出典: 『古事記』『日本書紀』の成立(記紀神話)

    因幡の白兎や国譲りを収める『古事記』について、成立年・関わった人物・『日本書紀』との違いを問う正誤問題や空所補充が、国語の文学史と日本史の両方で繰り返し出る。「現存最古の歴史書はどれか」「誦習した人物と筆録した人物の組み合わせ」「日本書紀との性格の違い」を答えさせる形が典型。

    答えの要点:『古事記』は712年成立で現存最古の歴史書。天武天皇の命で稗田阿礼が『帝紀』『旧辞』を誦習(暗誦)し、元明天皇の命で太安万侶が筆録して完成させた。上中下3巻で、上巻がこの因幡の白兎を含む神話。対して『日本書紀』は720年成立、舎人親王らの編纂で、漢文の編年体による対外向けの正史(六国史の最初)。「古事記=712年・阿礼が誦み安万侶が書く・神話中心の国内向け」「日本書紀=720年・舎人親王・漢文編年体の正史」と対で覚えれば正答できる。なお1979年に奈良市の茶畑から太安万侶の墓誌が出土して実在が確定した話も史料問題の鉄板知識。

腕試し(オリジナル問題)

過去問の丸写しではなく、この記事のために作った自作の練習問題です。腕試しにどうぞ。

問1因幡の白兎はなぜ皮を剥がれたのか。オオクニヌシが教えた治療法とあわせて説明せよ。

問2オオクニヌシは兄の八十神に2回殺されている。それぞれの方法と、誰の力で蘇ったかを述べよ。